山中 拓磨
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この記事はアーセナル選手紹介シリーズの最後の記事となっています。
もしよければ時間があるときにでも
監督&GK編、CB編、SB編、MF編その1&その2もあわせてお読みください。
アレクサンドル・ラカゼットの特徴・プレースタイル
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2017年夏にリヨンからやってきたフランス代表ストライカー。その何年も前から毎年のように移籍の噂が出ていたが、ラカゼットが30試合で28得点、リーグアン得点ランキング2位とキャリアハイの実績を残したタイミングでの移籍実現となった。
実は、アトレティコ・マドリードとの移籍が合意されていたらしいが、FIFAから禁止処分を食らったため、急遽他の移籍先を求めたラカゼットが選んだのがアーセナルだった、という裏側があった様子。近年の移籍金高騰を受けて、もともとエジルが持っていたアーセナルが費やした移籍金記録を更新する額(4500-5000万£)での獲得となった。
順調なスタートを切ったもののチームが絶不調やケガの影響もあって得点できない日々が続いていたが、春には復活を果たした。
175cmと小柄な体格のためヘディングでのゴールはあまり望めないが、足元の技術面は申し分なし、かつ足もそこそこ速く、もちろん決定力は抜群と高いレベルでバランスの取れたストライカー。9.5番タイプとでもいうのだろうか、昔のファンペルシーのような、下りてきても中盤と連携しながら仕事が出来るタイプ。
強いて課題を挙げるのであれば、身長は仕方ないとしても、もう少しプレミア仕様の肉弾戦でも存在感を示せると、ポストプレイでもより貢献できるのに、といったところだろうか。現状でも十分上手いのだが、やはり時折強靭なCBが相手だと当たり負けする場面が見られることがある。
なんでも上手くこなすことができ、かつ真面目そうで私生活でも隙が無いので、選手紹介的にはあまりネタ要素がないのが残念といえば残念なところだろうか。
ピエール=エメリク・オーバメヤンの特徴・プレースタイル
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サンチェスを失ったのでとりあえず手近なところでワールドクラスの選手を代わりに連れてこなければ!ということで若干パニック気味に白羽の矢が立てられた、ガボン人ストライカー。
ラカゼットを史上最高額の移籍金で獲得した数か月後に再び最高額記録を更新して連れてこられたストライカー、ということでアーセナル補強ポイントはそこなのか?という疑問こそ残るものの、ドルトムントでの活躍は誰もが知るところだろうし、能力的には疑いの余地はない。ウォルコットの移籍により空席となった、アンリの背番号である14を与えられたことからもアーセナルの期待が伺える。
年齢的にも若くはなく、スピードを武器とする選手をこの年で獲得するのはどうなのか、といった声も聞かれたが、ムヒタリアンとセットで獲得されてきたというのも大きかったようで、デビューから8試合で6得点と何の問題もなく適応してみせた。
身長が高い割には空中戦は得意ではなく、またボールタッチも平均的とはいえ、それを補って余りあるスピードと得点力を誇る。知的な動きだしからスペースを作りつつ裏へ抜けるのが非常にうまく、また“ストライカーの嗅覚”とでもいうのか、ボールのこぼれそうなところに飛び込む力にも長けている。
最近はよりボールを収められるラカゼットをセンターにおいてオーバメヤンを左サイドに起用する形も多く、ヨーロッパ1のストライカーをサイドで使うなんて!と監督を批判する向きもあるが、チームとしての攻撃の形が定まってくれば、それはそれで、かつてのクリスティアーノ・ロナウドや今季のサラーのようにサイドの選手が得点を量産する例もあることだし、機能するかもしれない。とはいっても、ラカゼットの方がチャンスメイク力なども含めて万能型なので彼をサイドにおいてオーバメヤンがセンターの形を見てみたいような気もするが。
スポーツカーを乗り回し派手なファッションに身を包んだりといったスタイルとは裏腹に、自身のハットトリックがかかった場面でラカゼットにPKを譲るなど、チームメイト思いの一面も持っている。インタビューなどを見るに、陽気でノリは良いが謙虚で優しい、と実は非常に好青年のようである。
トレードマークは得点後に見せる前宙セレブレーションなのだが、アーセナルファン的にはいつか怪我するのではないかと非常に心臓に悪い。
ダニー・ウェルベックの特徴・プレースタイル
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生まれも育ちもマンチェスター、だが心はアーセナルにあるイングランド人ストライカー。マンチェスター・ユナイテッドのユース上がりの選手ということで、もしアーセナルへ移籍してこなければ、アーセナルで言うところのジャック・ウィルシャーのような立ち位置の選手になっていたのではないかと思われる。
アーセナルの呪いとでも呼ぶしかないのだが(あるいは単にアーセナルの医療チームや練習環境が悪いのかもしれないが)、ユナイテッド在籍時にはほとんど大怪我などしていなかったにも関わらず、アーセナルにやってきた途端に怪我がちになり、この4シーズンで既に長期離脱が二度、軽度の怪我は数知れずとウィルシャーやラムジーに迫る勢いで怪我の多い選手になってしまった。
結局アーセナルにやってきてからは毎シーズン多くても20試合程度しか出場できておらず、好調時にはそのポテンシャルの片鱗を見せるものの、波に乗ってくるとまたしても怪我でリセット、ということを繰り返してばかりいる。
そのせいもあってか、本当にストライカーなのか?と思わせるようなゴール前での慌てっぷりを見せることもしばしばで、点を決めるときでさえもバタバタしているうちに、すねに当たってゴール、といったような形が多い。むしろ逆にウェルベックがきれいな弾道のシュートを決めたりするとアーセナルファンが少しざわつくほど。
ラカゼット、オーバメヤンと立て続けに前線の選手を獲得したので恐らくストライカーとしてはセカンドチョイスにすらなれないだろうが、サイドでも発揮されるその献身的なプレーと守備での貢献は他の選手にはないものなので、第三ストライカー兼時々サイド、という役割を選手自身が受け入れられるのであれば、チームにとっては非常に有用な選手になれるのではないかと思う。
詳しい事情はわからないが、古巣相手のゴールは祝わない選手も多い中、FA杯でマンチェスターユナイテッド相手に決勝点を決めた際に、涙しそうな勢いでの熱いセレブレーションを見せ(上の画像のシーン)、アーセナルファンのハートをガッチリ掴んだが、マンチェスター時代は余程苦しかったのだろうか。
エディー・エンケティアの特徴・プレースタイル
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メイトランド=ナイルズを始めとしてネルソンやウィロックと今年はユース選手が大豊作のアーセナルだが、その中でも飛びぬけたポテンシャルを誇る若手ストライカー。
ウィロックやネルソンと同じ18歳だが、同じくユース上がりのチューバ・アクポンがチャンスをものに出来ず燻っている間にトップチームの第4ストライカーの座を奪い取った。
まだプレミアリーグでの出場機会はほとんどなく、得点もないが、なんといっても衝撃的だったのは彼のファーストチームデビュー戦となった2017年10月カラバオ杯のノリッチ戦だろう。
メンバーを落としていたアーセナルはノリッチ相手に苦戦し、後半40分の段階で1-0とリードを許していた。そこで、ベンチにいた唯一のストライカーであったエンケティアが投入されて1分も経たないうちにコーナーキックから同点ゴールを叩きこんでみせた。
しかもその勢いは止まらず、そのまま突入した延長戦で決勝点も挙げ、エンケティアの2得点でアーセナルの逆転勝利、と鮮烈デビューを果たしてみせたのだ。その図太さというかゴール前での落ち着きはウェルベックにも見習ってほしいほどのものがあった。
U-23の試合では、ユースレベルではもう相手にならないといわないばかりにー試合ーゴールペースで得点を量産しており、今後に非常に期待が持てる。オーバメヤンやラカゼットといったトップクラスのストライカーから上手く学んで大成して欲しいものだ。