山中 拓磨
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アーセナルサポによる、
アーセナルサポのための、
アーセナル選手解説になります。
具体的には、アーセナルのMFのプレースタイルや特徴を解説しております。
アーロン・ラムジーの特徴・プレースタイル
2008年にウェールズはカーディフから17歳で移籍してきたMF。ウェールズ代表ではトップ下を務めるが、アーセナルではその一枚後ろでプレイすることが多い。昔は右サイドでもよくプレイしていた。
移籍当時、マンチェスター・ユナイテッドがいち早くカーディフとは合意していたが、アーセン・ベンゲル監督が直々にラムジーを訪ねて口説き落とした結果、ユナイテッドを蹴ってアーセナル移籍を決断するというファンとしてはなかなか燃える経緯の末アーセナルにやってきた。
Embed from Getty Imagesそれからも順調に成長を遂げ、将来を嘱望されていたが、2010年2月のストーク戦でライアン・ショークロスに殺人タックルを食らい、長期離脱。これ以降彼のキャリアには暗雲が垂れ込めることとなった。
この怪我自体は一年とたたずに完治したとされたが、それ以来怪我がちになり、また実際に身体的なものなのか、それとも精神的な影響なのかプレイにキレが見られず苦しい時期を過ごすこととなる。
それでもベンゲル監督は、ファンから見れば少し不可解とも思える信頼をラムジーに示し続け、中盤にポジションがない際には不慣れなサイドで起用してまでラムジーを使い続けた。
2011/12、2012/13の2シーズンは30試合以上出場しながら数アシスト数ゴールにとどまっており、ファンの間では放出を望む意見も高まっていたが、ついに2014/15シーズン、覚醒の時が訪れる。
このシーズンも後半をまたしても怪我で棒に振ったにもかかわらず、20試合で10ゴール8アシストと大爆発。ゴールの種類も華麗なドリブル突破に超絶ミドルに神ボレーとバリエーション豊かで当時のGKシチェスニーが今のラムジーならどこにいてもボールを触ればゴールに吸い込まれる、とコメントするほどの決定力だった。
それ以降も慢性的な怪我には悩まされつつも、基本的な技術は高く、無尽蔵のスタミナに後ろのポジションからゴール前に飛び込むタイミングは抜群と攻撃面ではオールラウンドな選手に成長を遂げた。
守備でもタックル自体は比較的上手いし、スタミナを活かして貢献できるはずなのだが、守備意識が低いため肝心な時に上がってしまっており、ペアを組む守備的MFをあたふたさせることが多い(今年はジャカがその主要な犠牲者)。
スタミナが尽きないのは良いが、いくらなんでも2点リードしている後半40分台にカウンターを狙って矢のようにゴール前に走り込みにいくのはやめていただきたい。笑 コーチに就任したレーマンあたりにちょっと小一時間問い詰めてもらいたいところ。
そういう意味では、有望な若手、怪我がち、守備放棄しがち、不調/怪我でも諦めきれずに使われ続ける、技術は高く、ハマれば爆発的な攻撃力、と一人でアーセナルとアーセン・ベンゲルのチームを象徴するかのような選手。守備のことを考えるともう一列前で起用した方が良いのでは、という意見もあるが、ラムジーを3列目で使ってこそアーセナルらしいといえるのかもしれない。
FA杯限定でだがやたら勝負強く、2015年、2017年とFA杯決勝で二度もアーセナルに優勝をもたらす決勝ゴールを挙げており、本来ならばそろそろレジェンド待遇を受けていてもおかしくないのだが、何故かファンからの人気はそこまででもないのはどうしてなのだろうか。
ジャック・ウィルシャーの特徴・プレースタイル
今やプレミアリーグのトップクラブでは絶滅危惧種になりつつある、ユース上がりの国産MF。
アーセナルがFA杯優勝した際のパレードでは、率先してファンと一緒に宿敵トッテナムを馬鹿にするチャントを大合唱するなど、身も心もアーセナル一色で、ホールディングやチェンバースといった若手を除けば唯一残るイングランド人選手ということで、現地ファンの期待も一身に背負っている。
ラムジーと並んで今のアーセナルに最も昔から在籍している選手でもある。CMFとしてトップ下の後ろでプレイすることが多かったが、最近は監督はウィルシャーは二列目の選手だと繰り返し口にしており、
サイドやより前のポジションで起用されることも。
Embed from Getty Images2008/9シーズンに16歳にしてトップチームデビューを果たすと、その翌シーズンのボルトンへのレンタル移籍で修業を積み、2010/11シーズンには完全にトップチームのポジションをつかみ取った。
そして、アーセナルファンでなくともウィルシャーの名前を聞けば話題に上がるのがこの年のCLバルセロナ戦で、史上最高との呼び声も高かったバルサの中盤を手玉に取った圧巻のパフォーマンスを見せ、アーセナルの逆転勝利に貢献すると、マンオブザマッチを獲得。当時まだ19歳で、イングランドのシャビの異名をとり、世界トップクラスのMFに成長していくと思われた。
だがここから継続的に長期的な怪我に悩まされ、ポテンシャルを発揮しきれないでいる。そもそもイングランドのシャビなのだから泥臭いタスクはチームメイトに任せてゆったり構えていればいいのでは、と思うのだが、何故か古き良き英国人の熱い魂を抑えきれず、削り削られと昔のストークにいそうなプレイスタイルで五分五分のボールに果敢に飛び込んでいくのでどうしてもケガをしがち。
また、10代のころはストライカーの後ろを衛星的に動き回ってサポートし、素晴らしいスルーパスもお手の物、といった感じだったが、何故か近年はイングランド代表のDMF不足とも相まって俺はアンカーになる!と言い出してみたり、かと思うとクラブでは昔のスルーパスは鳴りを潜め、時々ドリブル特攻野郎化していたりと若干迷走気味の時期もあった。
昨季出場機会を求めてボーンマスへのレンタル移籍を選択し、レンタル先でもあまりぱっとせず、ついにアーセナルとのラブストーリーは悲しい終わりを迎えるかと思われた。
が、気づけば今季はラムジーのケガを契機にチャンスを掴み、スタメンに名を連ねることもあり、完全復活とは言わずとも復調気味であり、アーセナルも新契約のオファーを出した模様。
やはり時折見せるウィルシャーのセンスあふれるプレイは他の選手と一線を画すものがあり、いくら怪我が多くても監督が諦めきれない気持ちはファンにも十分理解できる。
グラニト・ジャカの特徴・プレースタイル
いつまでたっても改善されないアーセナルの中盤の救世主となるべくブンデスリーガからやってきたアルバニア系スイス人MF。このポジションの選手としては非常に高額な移籍金だったこともあり、期待は非常に大きかったが、今のところその期待に応えられているとは言い難い。
監督さえも当初は守備的MFを獲得したと思い込んでいた節があるが、タックルがそこまで上手いわけでもなく、機動力もなく、かつ守備意識やサッカーIQ的にも守備に気の利く選手というわけではなく、そもそも本来のポジションが守備的MFなのか疑問が残る。
特に、もともとそういう選手なのか、アーセナルに来ると誰しもがそうなってしまうのかはわからないが、技術的な問題以前の話で、守備時に完全に気を抜いてしまうことが多々あり、今季のアーセナルの失点のかなり多くに直接かかわってしまっている。しかも、その挽回のためか雑にスライディングで飛び込んでしまうことも多く、カードも多いというおまけつき。
Embed from Getty Imagesとはいっても、今シーズンは守備面での不調に引きずられるようにあまり見られないが昨シーズンはピルロを彷彿とさせる絶妙な浮き球のスルーパスを見せたり、プレミアでも全く当たり負けしないフィジカルも備えており、使いようによっては素晴らしい選手のはず。
したがって、現状アーセナルはジャカを有効活用できていない、という言い方の方が正確だろう。ブンデスリーガ時代には同ポジションでシャビ・アロンソと比較されるほどの評判でもあったし、何とか今後に期待したいところ。
アーセナルは綺麗な形でのサッカーにこだわりすぎるあまり、シュートのチャンスを逃している、とよく批判されるが、そんな中で唯一といっていいくらいのミドルシュートを打ち、そして決めることのできる貴重な選手でもある。
なかなか精悍な顔つきをしており、ジルーが去った今、アーセナルのイケメン枠の座を虎視眈々と狙っている気がする。
モハメド・エルネニーの特徴・プレースタイル
2016年の1月にジャカの出身地でもあるバーゼルからやってきたエジプト人CMF。名付けるならばミスター70点。試合を決めるような活躍を見せることはないが、かといって不調であったり、負けにつながるミスを犯すようなことも全くない。
基本的には安全なパスを選択することが多く、野心的なスルーパスなどはない代わりに、全試合平均して非常に高いパス成功率を誇る。ジャカやラムジー、かつてのチェンバレンといった、調子次第で雑なパスを連発しがちなメンツの中で数少ない、ボールを持っているときにアーセナルファンの心臓をドキドキさせない選手。
スピード、フィジカル、技術、すべてそこそこ、といった感じの選手で、しかもほとんど得点にも失点にも絡まないため、ハイライトのみ試合を見ると出ているのか出ていないのかわからないいことが多い。笑
Embed from Getty Images一時期は完全にポジションを失っていたが今シーズンはそこそこ出場機会も得ているのでこの調子でいけば絶対同時にはそろわないウィルシャーとラムジーの穴を埋める存在として新契約もオファーされそう。
いつもニコニコしていてとても気は良さそうなのだが、サンチェス移籍の話でごたごたしているときに、
SNS上で『誰が俺と一緒にW杯に行ってくれるかな?→チームメイトをタグ付け→(敗退したチリ代表の)サンチェス、お前の席はねーな、すまん!』と物凄い爆弾を投下したり、
サンチェスが移籍した直後の試合では『ようやくチームのために100%尽くしている選手が揃った』みたいなコメントを投稿してみたりと、チームの輪を乱す奴は絶対に許さない熱い男でもある。
ジョー・ウィロックの特徴・プレースタイル
同じくアーセナルユースチームに所属していた兄クリス・ウィロックが出場機会を得られず移籍していったのに伴って台頭してきたイングランド人ボランチ。
やはりユース育ち、イングランド人、アーセナルに欠けている守備的MFというのが三拍子揃っていることもあってファンの期待も大きい。
Embed from Getty Images今シーズンカップ戦でデビューしたばかりでまだほとんどトップチームでの出場がないためその実力は未知数だが、
流石アーセナルユースということで技術もしっかりしていそうだし、比較的大柄で、既にフィジカルも出来上がっているようなので今後に期待できそう。
実はジョー、クリス、の上にもう一人マシュー・ウィロックという兄がいて、三人ともサッカー選手というエリート兄弟なのだが、何故かマシューのみユース時代に移籍して、
マンチェスター・ユナイテッドのユースチームに所属していた(現在はトップチーム昇格後スコットランドにレンタル中)。いったい何があったのか。