【徹底検証】ウルブスは何故チェルシーを下せたのか

       

リーグ戦でここ7試合白星がなかったウォルバーハンプトン・ワンダラーズは、

ホームにロンドンの強豪チェルシーを迎え入れた。

前半のロフタス=チークの先制ゴールで雲行きは怪しまれたものの、59分と63分に2点を奪い逆転勝利を収める。

書き手

ウルブズの大健闘!

 

ここ最近のチェルシーはというと、国内リーグに2つのカップ戦が加わり中3日の過密スケジュールを強いられている。

勝ちには恵まれてはいたものの、疲労を考慮してダビド・ルイスとジョルジーニョはリザーブメンバー登録。

彼のいつもいるポジションにはJリーグへの移籍も示唆されるセスク・ファブレガスが起用された。

また、カップ戦での出場が多いロフタス=チークは中盤の左で、アンドレアス・クリステンセンはリュディガーの相棒を任せられた。

 

ラインナップ

キーポイント①:自分の背後での対応を試みる守備陣

開始早々にチェルシーに決定機が生まれる。リュディガーからのロングフィードがウルブズの深い守備位置まで到達してこれを弾き返す。

一度交代した守備陣形を元の高さまで修正するのが遅く、前に出る選手と後ろに留まる選手とでギャップが生まれたためアザールにそこのギャップを突かれた。

また、ソリッドな[5-4-1]を敷いて(ヒメネスとジョタは常に前へのプレッシングと後方への交代を繰り返していたため、[5-3-2]というようにみえた。)チェルシーの攻撃に備えている場合も常に裏を狙われ続けた。

これは

①最終ライン5人のライン統率が不十分であったこと

②敵を常に後方視野へ置いたために、後方へ出されるフライボールにヘディングや間一髪のスライディングで対応せざる負えない状況に。

結果、前半17分のチェルシーの先制ゴールのシーンがうまれた。

【チェルシー得点①】

(前半17分)常にオフサイドラインギリギリにいるモラタとウィリアンのプレッシャーにあいジリジリ最終ラインは交代する。またボールのあるサイドではアロンソの裏への抜け出しに数選手が反応した。ベネットはチークとの間合いを広げ、それは十分にシュート体勢に持ち込める程。センターをカバーしていたサイスは対応が遅れシュートはブロックできず。

コーディーのカットしたボールは不運にもパトリシオの位置とは逆側のネットに吸い込まれる。カットインしてきた選手に対して誰が飛び出して対応するのか、90分間終わるまで不明確な点だった。

キーポイント②:チェルシーの不慣れな[4-3-3]

 

【攻撃編】

ウルブズの高い位置からのチェイシングは後半に入ってより一層強くなった。開幕から[3-4-3]ないしは[1-3-4-2-1]という陣形を敷くチェルシーにおいて絶対的なゲームメーカーであるジョルジーニョ(今季夏SSCナポリからの加入)を欠き、

底からのビルドアップに苦労する。SSCナポリにおけるマリオ・ルイのフルバック紛いの役目を果たすマルコス・アロンソはロフタス=チークのワイドな位置取りに自らのスペースを失う。

最前線へ繋ぐべく中盤のセスク・ファブレガスにボールを出そうとするがギブス=ホワイトのカバーシャドウにおいて彼は無力化される。

そこで、ケパはワイドに開く両サイドバックへショートパスを繋ぎ角度をつけるも、ジョタ・ヒメネスの早めな対応にお椀を意識したボールロスト回避のパス回ししかできず…。

どうこの局面を掻い潜るのかが大きなポイントとなった。

一つの解決策として、

①アザールが最終ラインまで降りてくる

②アロンソが内に入ってアザールからボールを受ける

③高い位置に張ったチーク&モラタへミドルパス

といった風に各選手の長所をそこにぶつけて1シーン毎に問題を紐解いた。チークはスペースの有効な使い方に大きな課題が残るも、ボールの受けてとしてまたドリブルでの持ち運びに関して試合を決定づける非常に有力な選手だったといえる。

なお、このやり方を採用した時間帯からウルブズの守備陣判断能力は大幅に低下した。不必要なタックルや対応しきれずイエローカードを貰うシーンが非常に増えた。

【守備編】3バック特有のデメリットは両サイドハーフの裏にできるぽっかり空いたスペースだ。

ここ数節の失点時に露呈したのは、ジョルジーニョの守備範囲について。今節はその位置にファブレガスが器用されて最終ラインも4バック。ここにもチェルシーの独特な弱点が垣間見れた。

最も大きな課題は、ネガティブトランジション時にできるファブレガスの両脇のスペースだ。ウルブズはこのスペースを利用すると得点に最も現実味のある攻撃を展開できた。

後述する1失点目の問題点は実はこのシチュエーションがベースだ。

【ウルブズ得点①】(後半14分)

例のファブレガスがアンカーの位置にいることでできる両脇のスペースにボールキープ能力に長けたギブス=ホワイトが侵入する。

デュエルに持ち込まれるも簡単に剥がされてしまう。カンテが後方から追いかけるも追いつかず。広い位置取りをする最終ラインの間にいるヒメネスへスルーパスを通し、ニアサイドから打ったシュートが決まる。

この広がった最終ラインは高い位置のデュヘティー・ヴィニャグレに両サイドバックが注視したために起こった。

クリステンセンとリュディガーの距離だけを縮めると簡単にハーフスペースを突破されるといった難しい選択を強いられた。※ウルブズの2得点目は割愛する。

キープレーヤー①:モーガン・ギブス=ホワイト

https://twitter.com/Morgangibbs27/status/1069997542522454017?s=20

この試合を観戦した方はかなり印象的に思っただろう。彼のプロフィールを少し紹介すると、ウヲルバーハンプトン・ワンダラーズ所属でU-18イングランド代表にも選ばれている18歳のミッドフィルダー登録の選手…え、18歳!と感じてしまう程に高いクオリティを持つ選手だ。

今節はウィングの一角を任され、攻撃時には空いたスペース目掛けて果敢なドリブル突破を試みた。セスクを華麗に回避してスルーパスを出し同点弾に直接絡んだ。

守備時にはヒメネスと位置を交換し、最前線からキーパーとセンターバックにダッシュプレスを試みて相手の理想的なビルドアップを阻害した。

ヴィニャグレとジョタといった同じく20代前半の若い選手との連携を更に深められたのではないだろうか……。

キープレーヤー②:ルベン・ロフタス=チーク

https://twitter.com/rubey_lcheek/status/1069251053617590272?s=20

ボール・ポグバやフィリップ・ビリング、シェイフ・クヤテといったコンタクトの面で優位性を持つ選手達に精通する点がある。

例えば、ボールを持った際にはキラリと光る魅力的なプレーを見せたり身体の強さからポストプレーヤーやクロスのターゲットマンとしても機能する。今節はペナルティエリアの外から素晴らしいロングシュートをきめた。

また、中盤から最前線へ向かう段階で相手選手を一枚引き剥がしてチャンスを産むなど個人能力を十分に発揮した。しかし、守備面はというと及第点には届かない印象だ。

第一に自陣に戻る意識が低いことだろう。スペースの知識やボールを持っていない時の動きなど細かな知識が備わるとチームにとって重要な選手になれる可能性がある。

 



【了】

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