内藤秀明
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現地時間、8月10日、マンチェスターユナイテッド対レスターの一戦を皮切りに、
2018-19シーズンのプレミアリーグが開幕した。
(開幕戦は2-1でホームのユナイテッドが勝利。)
はじめに
昨シーズンはシティの独走で終えたプレミアリーグ。今季は多くのチームが補強に精力的で、混戦が予想される。
そこで今回は、上位チームの期待と不安要素に言及していく。
ではどうぞ。
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書き手
<プロフィール>
1990年生まれ。大阪府出身。新卒でリクルートに入社。2年間勤務後に独立して「プレミアリーグパブ」代表に。
学生時代に1年イギリスに留学。コーチングライセンスを取得し、プレミアに強いサッカーライターとしての活動も開始。ほぼ毎シーズン渡英してプレミアを現地取材している
— 内藤秀明 (@nikutohide) June 27, 2018
マンチェスターシティ
期待
即戦力級の攻撃的な選手が加入
レスターから6000万ポンド(約88億6000万円)でリヤド・マフレズを獲得。
昨シーズン怪我で、シーズンの多くの時間稼働できず、ほぼ今シーズンが1年目のバンジャマン・メンディもコンディションを上げていることを踏まえると、
実質、二人も即戦力級の選手が加わった。
これにより、ペップのサッカーがさらに進化することが予想される。
特に左サイドバックで縦に強いメンディを使う場合はハーフスペースでのプレーが得意な選手を、
偽サイドバック的なプレーが得意なファビアン・デルフが起用される際にはサイドで張って仕掛けられる選手を起用する可能性が高く
2列目の配置とサイドバックの組み合わせによってチームは変化して、攻撃に幅がさらに出るはずだ。
レギュラーの座を脅かしうる若手の台頭
偽サイドバックとしてもウイングとしてもプレーできる「デブライネの弟子」21歳のオレクサンドル・ジンチェンコが残留を決めたことで喜んだファンも多かったはずだ。
ブラヒム・ディアスもアタッカーとして仕掛けたかと思えば、中盤でパサーとしての資質も見せるなど大器を予感させる。
なにより18歳のフィル・フォーデンは巧みな技術と10代とは思えぬ状況判断の良さ、決定機を演出できるパスセンスなどで、即戦力級をアピール。
素晴らしい逸材たちが揃っている。
不安
フェルナンジーニョの控え
タイプが違うため純粋なバックアッパーではないが、アンカーのジョルジーニョをチェルシーに強奪されたことは痛手だ。
フェルナンジーニョの代わりになる選手を獲得できなかった。
CBジョン・ストーンズをそこで使うことで乗り切ろうとしているが、ベテランのブラジル代表MFとのクオリティを比較すると、現状物足りないと言わざるをえない。
シティにおける唯一といえる陣容面の穴だと言えるだろう。
マンチェスター・ユナイテッド
期待
層の厚い中盤
ブラジル代表フレッジという、運動量が豊富で守備面の貢献度が高く、レフティながら両利きのパサーという珍しい資質を持つ小柄な移動型司令塔を加えた。
またポール・ポグバはフランス代表ので覚えた責任感をそのままクラブに持ち帰り、
2列目の選手かと思われたアンドレアス・ペレイラが、視野の広さ、落ち着き、抜群のファーストタッチを披露して中盤の底で才能が開花。
中盤の層の厚さが昨シーズンに比べると段違いだ。
不安
右ウイングとCBの補強が…
実質的な補強の責任者エド・ウッドワードの株価は、今夏大暴落した。
かねてより補強の温度感が高かった、右ウイングとCBの補強ができないまま移籍マーケットは終了。
不安の残る開幕に…。
モウリーニョ3年目の呪いはいかに
モウリーニョの3年目は上手くいかないことで有名だ。
ただユナイテッドファンからすれば不幸なことに、モウリーニョはこれまでユナイテッドでリーグ優勝もチャンピオンズリーグ優勝も成し遂げていない。
そういう意味では監督も選手もモチベーションとしては問題ないので、今回はその「呪い」は当てはまらないはず。
などと理屈で考えつつも、なんとも言えぬ不安がチームを覆っているのも確かだ。
トッテナム
期待
主力の残留
ハリー・ケイン、デレ・アリ、クリスティアン・エリクセン…など
ワールドクラスの主力級が誰一人引き抜かれなかった。
これ以上の補強があるだろうか。
若手中心のチームに円熟味増すか
選手は若手中心であり、伸びしろがある。
8番を背負うことが決まったハリー・ウィンクスなどはその典型だ。
昨シーズンはまった堅守速攻型のサッカーに同じメンバーで戦い、若手が成長して、そのサッカーの精度が上がれば面白くなる。
不安
W杯の影響が非常に大きい
多くの選手がワールドカップの主力で活躍しており、
プレシーズンではほとんどの主力がプレーできなかった。
最も、新しいことを試せていないチームだと言える。
2003年に移籍マーケットのルールが始まって以来、初めての補強ゼロ
新陳代謝のないチームは低迷する、という定説がある。
変化がなければ選手は飽き、パフォーマンスを落とすという。
その定説をひっくり返す手腕をポチェッティーノ監督には披露してもらいたいが…。
リバプール
期待
補強の大成功
ナビ・ケイタ、アリソン、シャキリ、ファビーニョなど、
ワールドクラスの選手たちを次々と獲得。
これもクロップの求心力のなせる技か。
特に大きな課題だったGKを獲得できたのは大きい。
今季こそ念願のプレミア初優勝なるか。
不安
ファンダイクの相方問題
ロブレンがCL決勝以降、最高のパフォーマンスを披露しており、そのままであれば、ファンダイクと組んで鉄壁の守備を披露してくれることだろう。
ただ、「世界最高のCB」と自己評価し、「正しいけど、自分で言わないほうがいいのでは?」と熱血指揮官にも突っ込まれるなど、
どこか抜けている印象が拭えないクロアチア代表CBをどこまで信用していいのかがわからない。
余談だが、CL決勝に取材に行かれたカメラマンの山田さんによると、テレビには映っていなかったが、CL決勝でカリウスがミスした時に、一番怒っている雰囲気だったのは、ロブレンとのこと。
険しい表情で、前のめりに何かを叫んでいたそうだ。
チェルシー
期待
攻撃的なサッカー
サッリ新体制の元、ショートパス中心のサッカーは純粋に魅力的であり、面白い。
このサッカーにより、アルバロ・モラタやセスク・ファブレガス、エデン・アザールなどは昨シーズンよりも気持ちよくプレーできるはずだ。
昨シーズンは全く居場所が見つからなかった、ロス・バークリーもこのシステムなら出番はあるだろう。
チーム自体の進化もそうだが、サッリの下、選手たちがどう成長するかも楽しみな要素のうちの一つだ。
移籍市場での立ち振る舞い
リバプールほどではないが補強が上手くいったと言える。
サッリサッカーの要であるジョルジーニョをシティから強奪。
クルトワの後任にはケパ・アリサバラガというビッグネームを獲得し、
層の薄かった左インサイドハーフには、レアルからマテオ・コヴァチッチまでローンで獲得した。
また移籍が濃厚と言われていたウィリアンも、少なくとも国内に売ることがなくなったのは朗報だ。
昨シーズン、ルカクやジョレンテなど、とことん、他チームに強奪され続けたことを考えると、非常にポジティブだ。
不安
サッリサッカーのプレミア適応
多くのファンが期待している一方で不安にも感じている
今シーズンの「サッリ・チェルシー」について
— プレミアリーグパブ (@PL_Pub_jp) August 6, 2018
ダイレクトパスの多いパスサッカーは、選手間の意思疎通が高まらないと成立しないものであり、熟成に時間がかかる。
また、その要たるジョルジーニョはプレミアの守備面の強度に合うかがまだ未知数。
カンテがある程度カバーしてくれるだろうが、それもどこまでできるかは、蓋を開けてみないとわからない。
クルトワの穴、アザールの移籍は
クルトワはチェルシーサポからもはや嫌われているかもしれないものの、それでもワールドクラスのGKだった。
あの長いリーチをいかした安定したセービングを失ったのは大きい。
ケパが素晴らしいGKであることは言うまでもないが、プレミア初年度であることを考えると、過度な期待は禁物だ。
またアザールの移籍の可能性がまだ残っていることは、大きな不安の種である。
アーセナル
期待
適格な補強が実現
「即戦力級のCBとDMFの補強を」
と多くのファンが願い続けるものの、ヴェンゲル政権では叶えてもらえなかった願いが
エメリ新体制であっさり実現。
ファイターのソクラティス・パパスタソプーロスや、小柄な闘犬ルーカス・トレイラなど、新加入選手たちに期待がかかる。
なんなら、若手枠と思われていたマッテオ・グエンドウジも面白いくらいに縦パスをぽんぽん入れているのを見ると、彼も10代ながら即戦力級だ。
アーセン・ヴェンゲル前監督へのリスペクトと感謝は忘れないが、エメリ新監督がもたらした変化に大きな期待を抱かずにはいられない。
エジルの10番
苦悩のカミングアウトもあり代表引退することになった「元ドイツ代表」のメスト・エジルは
ウィルシャーから10番を受け継ぎアーセナルのプレーに集中することに。
これまでも素晴らしいプレーを披露してきてくれたが、今シーズンは特に期待してこのゲームメイカーのプレーを見つめたい。
不安
未知数のエメリサッカー
戦術家の側面と、モチベーター(というより抜群の調整能力?)の側面を持つエメリ監督は、
大きな期待を寄せている一方で、どういう色が出てくるのか未知数の部分も大きい。
一昨シーズン、バルセロナを相手の2legでは1-6で大敗。
1legで4点あったリードをひっくり返されてしまい、ベスト8を逃したあの勝負弱い側面が出ないことをただ祈るばかりだ。