【エジルの告白】代表引退の理由をSNSで明かす

日本時間、7月23日、早朝3時頃

アーセナル所属MFメスト・エジルが代表引退を発表した。

従来の代表引退の発表では感謝の気持ちなどが綴られるものだが、元ドイツ代表MFが明かした内容は衝撃的なものだった。

SNSで衝撃的な告白

エルドアン大統領との面会

ここ数週間、振り返ってここ数ヶ月で起こった出来事についてよく考える時間があった。そこで、起こったことについて僕の考えること、感じたことを共有したいと思うに至った。

多くの人々がそうであるように、僕の祖先を辿れば一つ以上の国に遡る。僕自身がドイツで育った一方で、僕の家族の生い立ちにはトルコに根付く強いルーツがある。だから僕には2つの心、ドイツ人の心とトルコ人の心があるんだ。子供の頃に母から教わったのは、常に敬意を払いつつ、自分がどこから来たのかを忘れないということで、僕が今日まで心に刻んでいる価値観なんだ。

5月にエルドアン大統領とロンドンで面会した。慈善教育活動でのことだった。初めて顔を合わせたのは2010年で、彼とアンゲラ・メルケル首相がドイツ代表とトルコ代表の試合を観戦した直後だった。それ以来、僕たちは世界中で何度も顔を合わせることになった。

僕たちの写真がドイツのメディアから大きな反響を呼んだことは知っているし、一部の人々は嘘つきだとか裏切り者だとか糾弾したけど、僕たちが撮った写真には政治的な意図なんてなかったんだ。書いたように、僕の母は先祖、文化や家族の伝統から決して目を背けさせなかった。僕にとっては、エルドアン大統領との写真に、政治や選挙の意味合いなんてなかった。

僕はただ僕の家族の国の最高機関に敬意を表しただけだ。僕の仕事はフットボールの選手であって政治家ではないし、僕達の面会にはいかなる政治的な支援もなかった。事実、僕たちが話したのは、いつも会う度にする話題のフットボールだった。彼も若い頃は選手だったんだ。

ドイツのメディアは何か異なることをまことしやかに囁いているけど、真実として、大統領と面会しなければ、僕が今日ここにいることを誇りに思うに違いない僕の先祖のルーツに敬意を表していないことになっていただろう。僕にとっては、大統領が誰かなんてどうでもよくて、その人が大統領であることが重要だったんだ。

政治的機関に敬意を示すという意味では、女王とテリーザ・メイ首相が共にロンドンでエルドアン大統領をもてなすのと変わらないはずだ。それがトルコの大統領であれドイツの首相であれ、僕の行動は変わらなかっただろう。

理解するのが難しいことは承知している。多くの文化で政治的なリーダーは公私を切り離して考えられないからだ。でもこの場合は違う。先の選挙やその前の選挙がどんな結果になっていようと、僕は写真を撮っただろう。

メディアとスポンサー

間違いなく世界で最もタフな3つのリーグでプレーしてきたフットボーラーであることを自覚している。ブンデスリーガ、ラ・リーガ、プレミアリーグでプレーしながら、チームメイトやコーチングスタッフのサポートに恵まれてきた。それともう1つ、キャリアを通じてメディアへの対応も学んできた。

多くの人々が語るのは僕のパフォーマンスで、多くの称賛もあれば多くの批判もあった。僕がプレーした試合で新聞や専門家が間違いを見つけたなら、僕はそれを受け入れる。僕は完璧なフットボーラーではないし、これは僕がより励んで練習するためのモチベーションになる。

受け入れられないのは、ドイツのメディアが僕の2つのルーツを非難する報道を繰り返し、メンバー全員の身代わりとして上手くいかなかったワールドカップの批判の的にしていることだ。

一部のドイツの新聞は僕の生い立ちとエルドアン大統領との写真を、政治的主張を煽る右派のプロパガンダとして悪用している。

どんな理由で僕の名前がある写真と見出しを使ってロシアでの失敗を説明しようというのか?

彼らが批判しているのは僕のパフォーマンスでもなければ、チームのパフォーマンスでもなくて、僕のトルコの祖先と、生い立ちへのリスペクトなんだ。新聞がドイツという国そのものを僕の敵に回そうとしているように、これは超えるべきではないプライバシーの一線を超えている。

僕がさらに失望しているのは、メディアが抱えているダブルスタンダードだ。ローター・マテウス(ドイツ代表チームの名誉キャプテン)も数日前に他の世界的な重鎮と面会していたというのに、メディアによる批判はほとんど何も寄せられていない。

DFB(ドイツサッカー連盟)には彼の立場もあるというのに、彼はその行動について公的説明を要求されるどころか、何のお咎めもなしにドイツの選手の象徴として君臨し続けている。

もしメディアが僕にワールドカップのメンバーから外れるべきだったと言うのなら、もちろん彼も名誉キャプテンの座を剥奪されるべきではないだろうか?僕のトルコのルーツのせいで僕はより叩きがいのある標的になっているのだろうか?

僕がいつも考えているように、「パートナーシップ」とは、良いときでも難しい状況でもサポートをするということだ。

最近、僕は2人の慈善パートナーと、ドイツのゲルゼンキルヘンにある母校のベーガーフェルトに訪問しようとした。僕は移民や貧しい家族の子供たちや他の子供たちが一緒にフットボールをプレーしたり、生きていくために社会のルールを学べる1年間のプログラムに資金を提供していた。

ところが僕たちが行く予定だった日の前日に、もう僕と働く気はないと名ばかりの「パートナー達」に断られたんだ。さらに学校までもうここには来ないで欲しいと僕のマネジメントに言ってきた。エルドアン大統領と僕の写真のように、「ゲルゼンキルヘンで巻き起こる右派のパーティー」なんて取り上げかねないメディアを恐れていたんだ。

正直に言おう。これには本当に心が痛んだ。

若い頃は彼らの門下生の1人だったというのに、彼らにとっては不要で不本意な存在であることを思い知らされた。

これに加えて、他のパートナーからも見捨てられた。DFBのスポンサーでもあった彼らにワールドカップのプロモーションビデオに出演するよう頼まれた。それなのに、エルドアン大統領との写真が出回ると、彼らは僕をキャンペーンから外して予定されていた全てのプロモーション活動をキャンセルした。

彼らからすれば僕と映っても何も良いことはない「危機管理」と呼ばれる状況だった。これは全く皮肉なことだけど、ドイツの官庁が彼らの製品に顧客を危険に晒す違法で不正なソフトウェアがあることを公表した。何十万もの彼らの製品がリコールされている。

僕はDFBから批判に晒されて行動を弁明するように求められていたというのに、DFBのスポンサーに求められる公的説明は何も行われていない。なぜだろうか?僕の家族の国の大統領の写真よりよっぽど酷いと考えるのは間違っているだろうか?DFBはこれら一連の騒動について何も言うことがないのだろうか?

先に書いたように、「パートナー」というのはいかなる状況でも君に寄り添っていてくれる存在だ。adidas、Beats、BIgShoreはとても信頼に厚く、一緒に働けて素晴らしかった。彼らはドイツの報道やメディアによって生み出されたでっち上げに目もくれず、僕たちはプロフェッショナルとして一緒にプロジェクトを進められたし、僕も参加できて本当に楽しかった。

ワールドカップ中にBigShoeと協力して、以前にブラジルやアフリカでもやったように、ロシアの子供たち23人が命に関わる手術を受けられるように支援した。僕にとってはこれこそがフットボール選手としてできる最も大切なことだけど、新聞にはそういうことに関する認識を高めるスペースがないみたいだ。

彼らにとっては、僕への野次や大統領との写真が世界中の手術を必要としている子供たちへの支援よりも重要らしい。彼らには認識を高めるプラットフォームや資金もあるというのに、そうすることを選ばないんだ。

DFB

この数ヶ月間何よりも僕を苛立たせていることは、DFB、とりわけDFBのラインハルト・グリンデル会長からの不当な扱いだ。

エルドアン大統領と僕の写真が出回った後、ヨアヒム・レーヴ監督から休暇を切り上げてベルリンに向かい、全ての話を終わらせて事実関係を明らかにする共同声明を出すように頼まれた。

僕のルーツや祖先、写真に隠されたそれらの理由をグリンデル会長に話そうと試みたけど、彼には自身の政治的見解を述べたり、僕の意見を貶すことにしかよっぽど関心がなかった。彼の振る舞いは見下しているようだったけど、最善はフットボールと来たるワールドカップに集中することだということで合意に至った。

こうした理由で僕はワールドカップの合宿中にあったDFBのメディアデーには出席しなかった。ジャーナリストが議論していたのは政治であって、僕を攻撃できないフットボールではないことは知っていたけど、レヴァークーゼンでサウジアラビア代表と対戦した試合の前にオリヴァー・ビアホフがTVインタビューを受けて全てが終わったかのように見えた。

その間に僕はドイツ大統領であるフランク=ヴァルター・シュタインマイアー氏とも面会していた。グリンデル会長とは違って、シュタインマイアー大統領はプロフェッショナルで、僕が言わなければならなかった家族、文化、決意についてきちんと耳を傾けてくれた。

その面会は僕とイルカイ(・ギュンドアン)とシュタインマイアー大統領だけで行われたけど、グリンデル会長は自身の政治的主張を煽るから入室を許可されず、動揺を隠せていなかったことを覚えている。

シュタインマイアー大統領と合意したのは、その問題についていずれ共同声明を発表するということで、前を向いてフットボールに集中することが狙いだった。でも、グリンデル会長は彼のチームが真っ先に声明を発表できなかったことに動揺し、シュタインマイアー大統領の報道官がその問題を解決しようと先陣を切っていることに苛立っていた。

ワールドカップに敗退してから、グリンデル会長には大会前の彼の判断のせいで、かなりの責任を追及されていた。

最近になって彼は公の場で、やはり僕が説明をすべきだと言い、ロシアでのチームの不甲斐ない結果の責任を僕に押し付けた。

ベルリンで僕にもう終わったことだと言ったのに。

今僕が口を開いたのはグリンデル会長のためなんかじゃなくて、僕自身がそうしたいからだ。彼の無能さときちんと仕事もできない無力さのせいでスケープゴートになるのはもううんざりだ。

あの写真が出回った後、彼が僕をチームから追い出そうとしたことも、何の考えも話し合いもなしにTwitterで彼の知見を公表したことも知っている。ヨアヒム・レーヴやオリヴァー・ビアホフは僕のために立ち上がって支えてくれたというのに。

グリンデル会長や彼の支援者の目に僕がドイツ人に映るのは僕たちが勝ったときだけで、負ければ移民に映る。

だから、ドイツで税金を納めて、ドイツの学校に設備を寄贈して、ドイツ代表で2014年にワールドカップを制したのに、僕はまだ社会から受け入れてもらえないんだ。「異物」として扱われている。

ドイツ社会に融合した成功例として2010年に「バンビ賞」を受賞した。2014年にはドイツ連邦共和国から「シルバーローレルリーフ賞」を受賞したし、2015年には「ドイツフットボール大使」に任命された。

それでも僕はドイツ人じゃないと言うのか…?

僕の友人であるルーカス・ポドルスキやミラスロフ・クローゼは一度もポーランド系ドイツ人なんて呼ばれていなかったのに、どうして僕だけトルコ系ドイツ人になるのだろうか?トルコ人だから?ムスリム人だから?ここに大きな問題が根付いていると思う。

トルコ系ドイツ人と呼ばれるということは、すでに一つ以上の国から来た家族を持つ人々を差別していることになる。僕はドイツで生まれてドイツで教育を受けたのに、どうして人々は僕がドイツ人であることを受け入れないのだろうか?

グリンデル会長のような意見は他の場所でも見られる。

エルドアン大統領と僕の写真と僕のトルコの生い立ちを理由に、ベルント・ホルツハウアー(ドイツの政治家)に「手に負えないクソイスラム野郎」と呼ばれた。

それだけじゃなく、ヴェルナー・シュテアー(ドイツ座の座長)は、トルコで多くの移民が住んでいる場所、「アナトリアで小便してこい」と僕に言ってきた。書いてきたように、家族の祖先を理由に僕を批判して侮辱するのは超えてはいけないラインを超えているし、政治的プロパガンダの道具として差別を用いるような敬意に欠ける人々は今すぐに辞任に追い込まれるべきだ。

そうした人々は、人種差別的な本性を表す絶好の機会だとして僕の写真を使っているし、これは社会にとって危険なことだ。彼らはスウェーデンとの試合の後に「エジルはクソトルコ野郎だ。トルコの豚は消え失せろ」と言っていたドイツのファンと変わらない。

家族や僕が受け取ってきた電話やソーシャルメディア上のコメントでの脅迫や誹謗中傷については議論するまでもない。彼らは皆古臭いドイツのようだ。新しい文化にオープンじゃないドイツだ。そうしたドイツは誇りに思わない。僕に寄り添ってくれるオープンな社会を受け入れてくれるドイツ人を誇りに思うし、信じている。

ラインハルト・グリンデル会長、あなたに対して失望しましたが、あなたの行動に驚くことはありません。2004年にあなたはドイツ国会の一員だったのに、「多文化主義なんて絵空事で一生の嘘だ」と主張しました。イスラムの文化がドイツの都市の多くで定着し過ぎていると言いながら、二重国籍の法案と賄賂への処罰に対して反対票を入れていましたよね。これは許せませんし、忘れられません。

DFBや他の多くから受けた扱いのせいで、もうドイツ代表のユニフォームに袖を通す気はなくなった。望まれていないと感じているし、2009年の代表デビューからこれまで成し遂げてきたことが忘れられていると思う。多くの選手が2つのルーツを持つ家族から生まれている世界で最も大きなフットボール協会で、人種差別的な経歴がある人々が働くなんて許されるべきではない。彼らのような姿勢では象徴となるであろう選手と向かい合うことができない。

これには重苦しい気持ちがあり、最近の出来事について熟考を重ねた上での決断だ。

こうした人種差別や敬意に欠ける感情がある以上、もう代表レベルでドイツのためにプレーをすることはない。かつては誇りと歓びを持ってドイツ代表のユニフォームを身にまとっていたが、今はもうそうじゃない。

この決断を下すのは本当に辛かった。

常に全てをチームメイト、コーチングスタッフ、ドイツの良い人々に捧げてきたからだ。でもDFBの上層部が僕をああやって扱い、僕のトルコのルーツに敬意を欠き、勝手に僕を政治的なプロパガンダに利用し、もうたくさんだ。僕はそんなことのためにフットボールをプレーしているわけじゃないし、見守ることもないし、もう何もする気はない。人種差別は決して受け入れられるべきじゃないんだ。

 

 

メスト・エジル

 

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【了】

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編集部 A

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アメリカの大学に編入するもサッカーへの愛を忘れられず、どうせ英語を学ぶならイギリスの大学へ行けばよかったとちょっぴり後悔している20代。現在は卒業して東京で絶賛就職活動中。