内藤秀明
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アドナン・ヤヌザイ…
18歳にして、マンチェスター・ユナイテッドのアカデミーから昇格。トップデビューを果たした。
2010年代初頭の、最も期待されている若手選手のうちの一人…「だった」。
アカデミー時代のヤヌザイ、そして…
アカデミー時代のヤヌザイといえば2列目からワントップまでこなし、
最前線でプレーする際は、リオネル・メッシのように左足一本でボールを扱いつつ
シンプルにボールをさばきながらゴールを決める、よりスコアラーよりの選手だったと記憶している。
しかし、彼にとっての不幸は2013-14シーズン、
アレックス・ファーガソン監督は引退し、デイビッド・モイーズ監督が就任したことだろう。
モイーズ監督の迷走は改めて説明する必要はないだろうが、一応、wikipediaの内容を載せておく。
2013年5月9日、アレックス・ファーガソンの後任としてマンチェスター・ユナイテッドFCの次期監督に就任することが発表された。
2013-2014シーズン、リーグ順位は低迷し、2014年2月9日の対フラムFC戦では約80本のクロスを上げる戦術で得点しながらも、詰めが甘く失点を許してドローゲームにしてしまうなど、様々な面での選手の起用法や采配、その戦術に批判を集めた。
2014年4月20日、モイーズの古巣である対エヴァートン戦に敗れた事によって、2013-14シーズンを無冠で終える事が決定し、リーグ優勝を逃すばかりか、UEFAチャンピオンズリーグ2014-15への進出すらも消滅するなど、数々の不名誉な記録が更新されるシーズンとなり、4月22日に退任(事実上解任)が発表された
モイーズ監督のフォローもいれておくと、ファーガソン退任後のタイミングでの就任は難しく、おそらく誰が率いても近しい状況になっただろう。
それだけ、前任者が偉大過ぎた。
一方で、伝説のクロス80本に代表されるように、徹底的なクロス主義の犠牲者になった選手がいる。
それが、アドナン・ヤヌザイだ。
繰り返すが、もともともう少しスコアラーより、ゴールの近くで真価を発揮するタイプだったのだが、気づけばモイーズ監督の指導の下、徹底的に強いクロスをGKとDFの間のくさいところに放り込む、クロスマシーンと化した。
成長の過程で、良い指導者に出会うことが、選手に良い影響を及ぼすのは明らか。
直近だと、元々突貫小僧だったモハメド・サラーが、ローマ時代にスパレッティ監督のもと、シャドーストライカーとしてのオフザボールの細かい動きを学習し、
クロップ監督のもと、ストライカーのロベルト・フィルミーノが偽9番的な動きをする兼ね合いもあり、ゴールを求められるようになった。
結果としての17-18シーズンのスコアラーとしての大活躍だ。
そういう意味では、ヤヌザイは不幸だった。
正確には12-13シーズン終盤、ファーガソン政権ラストイヤーにトップ帯同したものの、公式戦デビューはなし。
つまり事実上、トップ1年目でデイビッド・モイーズ監督に当たってしまったのだ。
プレーの幅を失うのも仕方がない部分がある。
せめて1年でも長くファーガソン監督の元でプレーできていれば、
クリスティアーノ・ロナウドのように「プロとしてどうあるべきか」を叩き込んでもらえて、早めにキャリアの巻き返しが可能になっていたのに。
そこのセルフコントロールが未熟なまま時は過ぎた結果、15-16シーズンの、ドルトムントローン時代に
「あの年齢において必要になる、自分自身を成長させようとする態度を持っていなかった」
とトゥヘル監督(当時)に言われることに。
おっと、これはモイーズ監督のせいではないか。
いずれにせよ、本人の不真面目さももちろん原因のうちの一つとしてあるだろうが
ユナイテッドの監督人事によって最も影響を受けた選手のうちの一人だろう。
ヤヌザイの現在
なお、現在はレアル・ソシエダでコンスタントに出場機会を得ている模様だ。
マドリーでレギュラー争いに勝てず、バレンシアで復活したかと思えば十字靭帯を壊し、ソシエダで程よい活躍をしたと思ったらヤヌザイに居場所を奪われ、今年ベティス加入という流れやで! https://t.co/tOI4fMpTrJ
— 中村僚(書籍編集者・ライター) (@italyno10) July 6, 2018
そこそこ! 今回の代表にも入ってるくらいやし。
— 中村僚(書籍編集者・ライター) (@italyno10) July 6, 2018
数試合見た感じ、右サイドで起用されて中切り込んでシュートとかコンビネーションで崩すとかやってたぞ。
— 中村僚(書籍編集者・ライター) (@italyno10) July 6, 2018
いい意味で、元のプレースタイルに戻りつつあるのかもしれない。
一方で、先日のワールドカップグループリーグ第三戦、イングランド対ベルギー戦で、スタメン出場を果たしたヤヌザイだが、
トーナメントの山の関係で「2位通過」が望ましいにも関わらず、
強烈なミドルシュートを決めて勝利に貢献。
みごと強豪ひしめく山へチームを導く「1位通過」の立役者になってしまったあたりに
なんともいえぬ「ヤヌザイ感」を覚えずにはいられない。
2013年から見ているので、そろそろ中堅かな?
と思わせて実はまだ23歳、ギリギリ若手の年齢。
まだ、ギリギリ、自身を変えることができる時期であることを考えると、サッカーIQを高める、良い指導者に巡り合って欲しいと願うばかり。
以上、ヤヌザイへの愛をこめて。