瀧本 拓朗
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連日の熱戦により盛り上がっているロシアW杯。
しかしその傍、様々な理由から誰もが夢見る大舞台に立てなかった選手もたくさんいる。
今回はプレミアリーグに所属する選手たちの中から、何人かの「W杯に出られなかった選手」にフォーカスをあて、その理由を探っていく。
1. ジャック・ウィルシャー
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ファンに好評だったユニークな形で発表されたイングランド代表メンバーのリストに、このガラスのエースの名前はなかった。
2017-2018シーズンは確かにこれまで以上のペースで試合に出場する事ができた。しかし幾度となく繰り返された怪我による離脱によって、彼にとっての「活躍」のハードルが大きく下がってしまっていたのもまた事実だ。
彼の他にない創造性を代表に求める声も多かったが、それと同時に今のウィルシャーに数年前と同じ様なクオリティを期待することへの疑問の声も多かった。
サウスゲイト監督は代表での経験で勝るウィルシャーより、若くて可能性に満ちたルベン・ロフタス=チークを選んだ。また、今回のイングランド代表が3バックをベースとするため、DFを多めに選出しCMFの枚数を少なく選出したことも影響しているだろう。
しかしまだ26歳だ。創造力と打開力は申し分無い。今の彼にとって最も足りない「持続力」さえここからの4年間で身につけられれば、カタールの舞台でそのピッチに立っていたとしてもなんら不思議ではない。
2. フィルジル・ファン・ダイク
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彼の姿をW杯で見られない理由はいたってシンプルで、オランダ代表がこの大舞台への出場を逃したからだ。
DF史上世界最高額で冬の移籍でリヴァプールに加入してから、すぐに主力として定着し、CL決勝出場まで果たした。強靭なフィジカルと高いビルドアップ能力を両立させたプレーはまさに現代型CBの称号にふさわしい。
そしてなにより初めての大舞台でも全く動じぬ驚くべき冷静さは特筆に値する。
ディフェンスラインのまとまらないアルゼンチン代表やポーランド代表にもし彼の様な選手がいれば、また違う結果になっていたかもしれない。
3. マヌエル・ランシーニ
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アルゼンチン期待の若手MFが出られなかった理由は、ここまでの二人とはまた異なる。彼はメンバーには選ばれていたが、W杯開幕直前のトレーニング中に右膝十字靭帯断裂の大怪我を負ってしまったのだ。
この小柄なMFは、南米予選には出場していなかったものの、ウェスト・ハムでのその「背番号10」にふさわしいプレーぶりから直前でホルヘ・サンパオリ監督の構想に入り込んだ。
先発出場もあり得ると考えられていたこのファンタジスタの離脱により、エベル・バネガへの負担が大きくなってしまった事がアルゼンチンにとって誤算だったとも考えられる。
豊富なアイデアを生かした細かいドリブル、一瞬で局面を打開できる決定的なラストパスはプレミアでも異彩を放っている。そしてまだ25歳だ。4年後また行なわれる夢の舞台に向けて、彼がピッチに戻ってくる瞬間が今から待ち遠しい。
4. アレクシス・サンチェス
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もし彼が出場していれば、「W杯注目の選手」の一人であったことは間違いないであろう。
しかし彼の母国であるチリ代表は、激戦必至の南米予選をあとわずかで勝ち抜くことができず、夢の舞台への切符を逃した。
試合終盤に大きな展開の多い今大会では、彼のような「90分通して闘える選手」がチームにいるかどうかが重要なカギの一つとなっている。
突飛な空想だが、彼のいるチリ代表がもしイングランド・ベルギーと同じグループGにいれば、マーカス・ラシュフォード、ジェシー・リンガード、ロメル・ルカクらクラブのチームメートと同じピッチに立つことになり、マンチェスター・ユナイテッドのファンにとってはたまらない競演になっていたであろう。
5. レロイ・サネ
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おそらく世界で最も「驚きに満ちた人選」だったのはこのレロイ・サネのドイツ代表落選だ。
シーズン優勝を果たしたマンチェスター・シティで出色の出来だったこのウィンガーは、ガブリエウ・ジェズスやヨシュア・キミッヒらと同じく、「ペップ・グアルディオラの愛弟子」としてこの大舞台でお披露目されると多くのサッカーファンが思っていたはずだ。
純粋に中に切れ込むより外に仕掛けることの方が得意なサネは、縦に攻め上がるマルヴィン・プラッテンハルトとの相性があまり良くない。さらにその事実は、SBの上がったスペースを埋めることの多いドイツ代表の絶対的MF、トニ・クロースとの相性が合わないことにも結果として繋がる。ただもちろん「選手同士の相性」が悪いとしても選ばれるべきほどの圧倒的な個の力を持っていることも間違いない事実だ。
おそらく最終的にユリアン・ブラントとの争いだったと考えられるが、上記のことを加味した上で、ハイレベルかつギリギリの競争に敗れてしまったと思われる。
しかし、ドイツ代表のヨアヒム・レーヴ監督は、会見にて彼の落選の理由を「誰もが納得する形」でしっかりと説明し、常に代表への門は開いているということを示唆した。サネにとって幸運だったのはドイツという国が「選手のことを常に尊重し、信頼感を得られる監督」を選ぶ国であるということであろう。
4年後彼がドイツ代表の絶対的大黒柱としてピッチに立っていてもなんら不思議ではない。
上記の選手たちもまた未来へと歩き始めた。ジャック・ウィルシャーは長年在籍したアーセナル退団を決め、マヌエル・ランシーニにはこれから辛く長いリハビリが待っている。ただどんな選手にも共通して言えるのは、「W杯に出ること」が選手としての全てではないということだ。また4年後、彼らがピッチで眩い輝きを放っていることに期待したい。