山中 拓磨
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どれくらいの信憑性があるのかはわからないが、先日仏レキップ紙にアーセナルの後任監督候補に関する報道が出ていたようで、
それによれば、第一候補はルイス・エンリケ、他にもカルロ・アンチェロッティ、ヴィエラ、モナコのジャルディム、
といった面々が候補に挙がっているらしい。
というわけで、アーセン・ベンゲルの後継者として名前の挙がった4人をオーディション風に紹介していこう。
1) ルイス・エンリケ
長所
ビッグクラブでの経験
選手としての実績や人脈
不安点
資金・戦力が限られている環境での能力が未知数
給料が高い
他クラブとの競争
上で触れたレキップ紙の記事では、アーセナルの第一候補としてあげられていたが、莫大な夏の移籍市場での予算を要求したため揉めている、との噂。
ローマやバルセロナを率いた経験がある、ということでアーセナルクラスのクラブの指揮を執る上でも不足はなく、リーグ優勝、CL優勝も経験しており、実績も申し分ない。
また、現役時代は名選手としても知られていたので、選手からの信頼を得るのは比較的易しいだろうし、バルセロナでの経験を活かしたスペイン方面での人脈も選手獲得の際にはプラスになると思われる。
少し不安な点としては、報じられている年俸が高額そうなことと、ローマでの成績がパッとしなかったことだろうか。アーセナルはバルセロナほど資金も戦力も充実しているわけではないので、こういった環境でどれくらい結果を残せるのかは未知数ではある。
また、英語が喋れるのかどうかがわからないのに加え、スペイン語圏のジャーナリストによると、性格が傷つきやすいモウリーニョみたいな感じ、という噂もあるのでイングランドでやっていけるかどうかも少し心配なところ。笑
2) カルロ・アンチェロッティ
長所
ビッグクラブでの圧倒的な実績
プレミアリーグ経験
不安点
予算が潤沢なクラブでの監督経験ばかり
年齢
言わずと知れた歴戦の名将。ユベントス、ACミラン、チェルシー、バイエルン、レアルマドリードとビッグクラブの監督を歴任しており、しかも行く先々でタイトルを勝ち取っている。チャンピオンズリーグ優勝3度と歴代最多タイの記録を持ち、実績で選ぶなら間違いなくこの人。
プレミアリーグでの経験もあり、英語も不安はなく、人脈的にも申し分ないが、唯一不安なのは、2009年にチェルシーに就任して以降、PSG、レアル、バイエルンと世界トップクラスに裕福なクラブを渡り歩いてきたため、エンリケと同じく、欲しい選手を買ってくるお金がない時にどうなのか、ということくらい。
ちなみに、フェルナンド・トーレスを獲得した時のチェルシーの監督を務めていたのはこのアンチェロッティ。
また、まだ58歳なのでそこまで年がいっているというわけでもないが、フロントとしてはベンゲル後の監督としてはもう少し若くフレッシュで、フロントとの力関係を明確にできる人材を求めているという話もあり、それがどう影響するか。
もし去年ベンゲル監督が退任することになっていれば、混沌とした状態で任せられそうなのはこの中ではアンチェロッティくらい、という結論に至っていたかもしれないが、1年かけてFDやチーフスカウトなど監督をサポートする体制を整えてきただけに、若手監督を起用する準備のように見えなくもない。
3) パトリック・ヴィエラ
長所
ファンの支持
選手時代の実績
若い
不安点
監督としての能力が未知数
Embed from Getty Images直接後任監督選びにかかわることはないと公言しているはいえ、ベンゲル現監督の一押しはこのパトリック・ヴィエラらしい。監督としてはまだ若く、かつグアルディオラも高く評価しているとのうわさで、評判は非常に良い。
そして、なんといっても選手時代はアーセナルのレジェンドであり、無敗優勝をはじめ、強いアーセナルを象徴するような選手でもある。元選手がレジェンドとして帰ってきて、チームを率いることになる、というのは誰もが夢見るシナリオではあるだろう。ヴィエラがアーセナル監督に就任すれば、当時を知るファンから絶対のサポートを得られることはほぼ間違いない。
しかし、監督としてはまだキャリアを始めたばかり、しかもニューヨーク・シティFCを率いたのみでヨーロッパ5大リーグでの経験はナシ、ということでその力量は全くもって未知数。伝説的な選手ということで、実績不足のせいで選手から信頼が得られない、であったり、クラブからの支持が、などということはないだろうが、とはいえやはりある程度は成績を残せなければ始まらないので、その肝心な部分が不透明ではある。
ただ、もし仮にヴィエラが将来の名将になる器だとすると、このままいくと普通にマンチェスター・シティの監督に就任してしまいそうなので、タイミングとしては今がチャンス、という見方もあるかもしれない。
4) レオナルド・ジャルディム
長所
若手の抜擢が上手い
金銭的制約に慣れている
若い
不安点
ビッグクラブでの経験不足
Embed from Getty Imagesもし報道されている、この夏のアーセナルの予算は50M£(75億円程度)!というのが事実なのだとすれば一番適任なのではないかと思わせるポルトガル人監督。モナコでの実績は素晴らしく、特に、若手の育成と抜擢には定評がある。
もちろんどこまで監督の功績といえるのかは議論の余地はあるだろうが、ムバッペを始めとして、カラスコ、マルシャル、レマール、バーナード・シウヴァ、ベンジャミン・メンディなどなど、ジャルディム体制のモナコで活躍した若手の数は凄まじい。しかも、ほぼ全員引き抜きにあっており、それでも上位を保ち続ける手腕はアーセン・ベンゲルに少し通ずるものがある。
アーセナルであれば育てたスター選手を売却する必要はそこまでないと思われるので、そういった環境でジャルディムがどこまでやれるのかは非常に興味深い。
唯一不安点としては、ヨーロッパのトップチームでの監督経験がないことくらいだろうか。メディアへの対応など、大きなプレッシャーがかかるビッグクラブでうまくやれるのかどうかは彼にとって新しい挑戦となるだろう。
とはいえ、実績的にはモナコの前にもオリンピアコスで指揮をとったり、低迷していたスポルティングを二位に引き上げたりと、ヴィエラと数歳しか違わないことを考えれば、この年齢としては十分ともいえる。
(この記事はアーセナル・コラムと同時掲載となっています。)