内藤秀明
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マンチェスター・ユナイテッドの7番は、エースナンバーだ。
エリック・カントナ、デイビッド・ベッカム、クリスティアーノ・ロナウド。
錚々たるメンバーが、その特別な番号を背負ってきた。
直近の7番
しかし、ロナウド以降の7番は、
「エース」の称号に値する活躍をしたとは言いがたい。
2009年〜2012年の間に7番を背負ったマイケル・オーウェンは、
4-3で勝利をおさめたマンチェスターダービーで、96分に劇的な決勝弾を決めるなど、7番に相応しい結果を残した。
ただし、それ以外の試合で目立った活躍は多くはなかった。キャリア晩年だったこともあり、7番に相応しいかといわれると難しいところだ。
12-13シーズンの7番だったアントニオ・バレンシアにいたっては、そのプレッシャーに押し潰されたのか、
ユナイテッド在籍史上、最低のパフォーマンスと言われるほどにプレーが悪化。
1年でエースナンバーを返上した。
14-15はアンヘル・ディマリア、15-16はメンフィス・デパイが7番を背負うが、
二人とも翌年もエースナンバーをつけることができなかった。
サンチェスも悪い出だし
今ではメディアから「呪い」と揶揄されることもあるユナイテッドの7番を、
2018年1月に、新加入のアレクシス・サンチェスが背負うことになった。
ユナイテッドサポーターからは
「実績のあるサンチェスなら大丈夫」
「もう29歳だけど、ここから落ちないか?」
などと期待と不安の声が入り乱れる。
結果的にいうと加入直後の2月、3月は、不安が的中してしまった。
7番のプレッシャーなのか、普段以上に決定的な仕事をしようとし過ぎてパスミスが目立つ。
もともと相手に合わせるというより、自分のイメージでパスを出しがちな選手ではあったが、それがアーセナル時代よりも際立って空回っていたような印象だ。
それでいて得意なドリブル突破も、得点力も影をひそめ、2カ月間でわずか2ゴールという結果に。
CLのセビージャ戦では何もできずベスト16で敗退。
7番の呪いは続くのかと思われた。
サンチェスの転機
転機となったのは4月に行われた、3-2で逆転勝利を収めたマンチェスターダービーだろう。
それまでゴールに絡む決定的な仕事がほぼできていなかったサンチェスだがこの大一番で、
記録上は2アシストだが、実質3ゴールすべてに関わるパフォーマンスを披露。
突如、パフォーマンスの改善の兆しを見せると、
2週間後のFAカップ準決勝トッテナム戦では、逆転の狼煙を上げる貴重な同点弾をヘッドで決めた。
4月に入り立て続けにビックマッチで結果を残し始めている様子を見ると、ようやくプレッシャーに慣れ始めたのかもしれない。
エースナンバーの7番にふさわしい活躍をし始めたサンチェスだが、まだ十分とは言えないだろう。
あくまで4月がちょっとよかっただけ。
加えてチームとしてタイトルという結果が出たわけでもない。
サンチェスの今後
現在29歳と言う年齢を考えると、サンチェスが5年後もトップレベルで活躍しているというのは考えづらい。
時間はあまりない。
10年後、
「あの時の7番はよかった」
と振り返ってもらえるためには、今のパフォーマンスを維持するのは最低限だ。
それに加えて、今シーズンのFAカップを確実に勝ち取り、来シーズンかその翌年頃までに、
プレミアリーグかチャンピオンズリーグを獲得する必要がある。
そこまでできれば、文句なしで、7番を背負うプレイヤーとして、サポーターからもメディアからも認められることになるだろう。
簡単ではないことは皆わかっている。
でも、簡単ではないことを簡単に成し遂げる選手であってほしい。
その大きな期待に応えることができる選手こそが、
ユナイテッドの「7番」に相応しいのだ。