グーナーがアーロン・ラムジーのファンになってしまう3つの理由

       
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瀧本 拓朗

瀧本 拓朗

海外サッカーが好きで、特にプレミアリーグ中心に試合を観ています。中学生の頃にそのパスサッカーに魅了されてから、ずっとアーセナルのファンです。戦術的な分析などはまだまだ未熟ですが、「こういう見方もある」という新たな角度を皆さんにお届けすることができれば嬉しく思います。

豊富な運動量と多彩なテクニックで魅せる

アーセナル所属のウェールズ代表MF、アーロン・ラムジー。

今回はそのプレースタイルだけでなく、彼のキャラクターの部分にも大きく焦点を当て、その魅力を紹介していく。

プレースタイル

まず最初に簡単にプレースタイルに触れておく。

一言で言うと、豊富な運動量と華麗なテクニックを両立させる『〝ネオ〟ボックス・トゥ・ボックス』だ。

「ボックス・トゥ・ボックス」といえば、自陣のペナルティボックスから相手陣内のペナルティボックスまで走り攻守に貢献するMFを指す言葉で、主にスティーヴン・ジェラードやフランク・ランパードなどの英国系のMFを指して言うことが多い。

ラムジーも例に漏れず、90分間耐えず走り続け攻守に貢献するタイプの選手だが、他のボックス・トゥ・ボックスの選手と違うのは、瞬間的な閃きとそれを具現化する確かなテクニックを持ち合わせていることだ。

英国系のMFといえば、運動量と基礎的な技術がハイレベルにある一方、どちらかというと「お堅い」イメージのある選手が多い。

しかしラムジーは、見る者が予想できないようなプレーをすることができる英国には稀有なMFである。

具体的にいうと、狭いエリアでボールを奪われずに相手を剥がせる華麗なターンやフェイント、さらには相手陣内のバイタルエリア付近での意外性のあるダイレクトパスなどが得意なプレーだ。

特に、相手のバイタルエリア付近で選手同士が近い距離を保ちながら数本のパスや個々のテクニックで崩していくスタイルのアーセナルに彼はピッタリであり、言い方を変えれば、それが彼がアーセナルで長くプレーできている理由の一つでもある。

また、その豊富な運動量を生かした「神出鬼没な動き」も大きな武器の一つだ。

特に、攻撃時に相手DFがFWに引きつけられてできたスペースに飛び込んで得点もしくはアシストするプレーを得意としている。それも、予期せぬタイミングで危険なエリアに飛び込んでくるため、相手DFも非常にマークにつきづらい。

そのため、メスト・エジルやジャック・ウィルシャーら創造性のあるパスをスペースに出すことができるMFと共にプレーするとその能力を大きく発揮することができる。

しかし、ラムジーのそういう動きは抜群の判断能力と空間把握能力に基づき意識的に上下運動を繰り返しているというよりかは、「今だ!上がれーーー!」「今だ!下がれーーー!」といった直感的な感覚に基づいている感が否めない。

そのため、不必要なスペースを空けてしまってピンチを招いてしまうことが多々あり、それが弱みの一つにもなっている。

ミスへのリアクションから見る「サッカー小僧」らしさ

これも彼の弱みの一つに関わる部分になってくるが、彼は試合中に素晴らしい閃きを見せてくれる反面、時折驚くほど集中を欠いたプレーを見せることがある。

これは元アーセナルのオックスレイド=チェンバレンやセオ・ウォルコットらと共通の課題でもあるが、ラムジーは驚くような難しいプレーをこなしてしまう反面、驚くような簡単なプレーをミスしてしまうことが多いのだ。

彼はそういう意味での「見る者が予想できないようなプレーをする選手」でもある。

特にラムジーは3-0や4-0などの大差で勝っている試合の終盤に

「今そのテクニック見せる必要ある?」

という軽いプレーを突然披露し、致命的なピンチを招いて良い試合に水を差してしまうことが多い。

アーセナルの試合をよく観ている人ならわかるだろうが、大体こういう時チームの司令塔、メスト・エジルに鬼のような形相で睨まれている。

しかしラムジーはそんな時もどこ吹く風、

「ごめん、ごめん♪」

と爽やかな笑顔で素早く次のプレーに切り替えるのだ(エジルからの視線にはおそらく気づいていない)。

さらにこういう場合大体の選手は、リスクを恐れて同じようなプレーはもうしないように心がける。しかしラムジーはまるで再放送のように1週間後に全く同じようなプレーでピンチを招いてしまい、また爽やかな笑顔を見せてエジルに睨まれるのだ。

エジルからのスルーパスは抜群のトラップで受け止めるが、エジルからの視線を受け取るスキルは持ち合わせていないようである。

見様によっては、「サッカー小僧」とも言えるようなこういうラムジーの図太さというか憎めない部分が他の選手にはない魅力の一つであり、応援していて楽しく感じる理由の一つでもある。

神経質すぎて思い切ったプレーができない選手は、ある意味ラムジーを良いお手本にするべきなのかもしれない。

大怪我からカムバックする不屈の精神

アーロン・ラムジーについて語る上で外せないのが、2009-2010シーズンのアウェイのストーク・シティ戦で負った大怪我である。

この時相手DFのライアン・ショウクロスのタックルにより腓骨と頸骨の骨折という最悪の大怪我を負ってしまったラムジーは約8ヶ月の離脱を余儀なくされることとなった。

あまりの酷さに中継していたテレビ局がリプレイを流さなかったほどのこの大怪我は、かつて同じくアーセナルのエドゥアルド・ダ・シルバが負った怪我と似たようなものだった。

将来を有望視されていた19歳の青年が、選手生命を左右されるほどの大怪我を負ったことで、彼自身もクラブも絶望の淵に立たされた。

それでもラムジーは終わりの見えないリハビリを乗り越え見事完全復活を果たし、今やアーセナルに欠かせない戦力の一人となっている。

その時のラムジーにはファンから多くのメッセージが届けられ、同じようなけがを負った先輩選手たちからも多くの励ましをもらった。

それらが彼の復帰への後押しになったのは無論間違いないが、何より彼自身のポジティブなキャラクターが完全復活できた最も大きな要因であった。

普通の選手なら腐ってしまうような大怪我を乗り越えたラムジーは、肉体的にも精神的にもより逞しくなってピッチに戻ってきた。そして今やプレミアリーグを代表するMFとなっている。

一つ目、二つ目の理由からわかるのは彼の「恐るべき」メンタルの強さであり、それが最も注目すべき彼のキャラクターの魅力の一つである。

よく見るとイケメン

これはキャラクターであるといってよいか定かではないが、彼はよく見るとイケメンだ。

クリスティアーノ・ロナウドやハメス・ロドリゲスはいわゆる「華のあるイケメン」であり、派手である。パッと見ただけで誰もがイケメンだとわかるような雰囲気とオーラがあり、かつ綺麗なつくりをしている顔だ。

一方、ラムジーはパッとその顔を見ただけで誰もが口を揃えて「イケメンだ」というような顔ではないが、「この人イケメンだよ」と言われて見てみると「あぁ確かにイケメンだな」と思うような英国らしい「落ち着いたイケメン」である。

もし彼のことを見る機会があれば、「あぁ確かにイケメンだな」と思うまでその顔をじっくり見てみて欲しい。

今回は、アーセナルのウェールズ代表MF、アーロン・ラムジーについてキャラクターの部分に大きく触れながら紹介した。

ラムジーがミスを恐れぬ強いメンタルと、深いことは気にしないポジティブさ、そして怪我にも負けない精神力を持ち合わせた人間味溢れる魅力的な選手であるということが今回お分かりいただけたのなら大変嬉しく思う。

サッカー選手について知ろうとする時、やはり一番気になるのは「どんなプレーをするのか」ということだろうが、たまにはその選手が「どんな人間なのか」を知ってみると、また違う見方ができるかもしれない。

 



【了】

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