デンベレの実績と偉大さ、そして彼を失う寂しさをここに綴る

2018年11月3日 プレミアリーグ第11節 ウルブスvsスパーズ

試合開始のホイッスルが鳴り響くと、センターサークルに立つムサ・デンベレがボールを蹴った。彼を悲劇が襲ったのはそのわずか1分後だった。

思い出したくもない、負傷シーン。





書き手

2010年前後から徐々にスパーズに魅了されていった大学生

【過去記事】

はじめに

ピッチに倒れこみ、悔しそうに何度も地面を拳で叩く19番の背中は泣いていた。

 

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残念ながら、リリーホワイトのユニフォームを身にまとった彼を見るのは、この日が最後となってしまった。

 

前々から移籍の噂はあったものの、我々スパーズサポにとってデンベレの退団報道は到底すぐに飲み込めるものではなかった。

 

1年間、ユース選手の入れ替わり以外全く変化がなかったというのも一つの要因かもしれない。

 

ユナイテッド戦の黒星、ケインとシソコの負傷、何度目かも分からぬスタジアム工事延期のアナウンス、ソンの離脱、オーリエの逮捕。

 

次から次へと降り注ぐバッドニュースで崩れかかった心に、大きな穴を開けられた。

 

ムサ・デンベレとの出会い

 

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デンベレがスパーズにやって来たのは2012年、夏の移籍マーケットだった。

 

フルハム時代、元スパーズ監督のマルティン・ヨルによってFWからCMFにコンバートし、才能を開花させたところをスパーズが目を付けた形だ。

 

移籍1シーズン目は早速チームの主核となり、サンドロとの大迫力の2ボランチで、リーグ戦30試合に出場。2シーズン目もリーグ戦28試合に出場し、パウリーニョとのコンビで中盤を支えた。ビラス・ボアス、ティム・シャーウッドの下で盤石のプレーを見せていた。

 

ところが、ポチェッティーノ監督が就任すると、ユース上がりの2人がレギュラーの座を奪った。ナビル・ベンタレブとライアン・メイソンだ。

 

デンベレは自分のキャリアで初めての”控え扱い”に、戸惑いを隠せなかった。試合に出られずにフィジカル強度が上がらないことに悩んでもいた。

 

シーズン半ばはハリー・ケインの1列後ろ、トップ下として出場機会を得ていた時期もあったが、結局3年目の2014-15シーズンはデンベレにとってスパーズで最も出番の少ないシーズンとなった。

 

2015年夏には売却の可能性もあったが、サンダーランドとの移籍交渉は決裂し、残留が決定した。

 

ポチェッティーノは厳しいシーズンを終えたデンベレと対話をし、デンベレの真価を発揮できるポジションを模索すると誓った。

 

そして、彼のキャリア全盛期は突然訪れた。

 

プレミアリーグ最強のMFへ

 

2015年8月、ユナイテッドとの開幕戦に右サイドで起用されると前線からの強靭な守備でボールを奪取、好機を演出し、その後数試合でも右サイドで脅威となった。

 

しかし彼のベストポジションはそこではなかった。

 

第4節の負傷から1か月半の離脱から戻ったリヴァプール戦、デンベレに与えられた最初のポジションは久々のボランチだった。同ポジションの面々が尽く出場できない中の”応急処置”と思われたが、彼の真価は遂に発揮された。守備で中盤を制圧し、マン・オブ・ザ・マッチの活躍を見せた。

 

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この試合後、「俺には自信がある。トップチームに張り合っていくには、この戦力層が必要だし、ポジション争いは良いことだと思う。」と話した。

 

その後もポジションを奪いスパーズの中心選手となったデンベレは、翌2016年1月、2019年までの契約延長にサインした。

 

パスのデンベレ。ドリブルのデンベレ。タックルのデンベレ。

 

何でもできるCMFだった。

 

デンベレにボールが渡ればほぼ間違いなく奪われない。手と体をうまく使い、一見ノソノソとしているようで相手を寄せ付けない独特なドリブルは他のどの選手にも真似できない。球離れが悪いと批判されるときもあったが、デンベレの相手を引き剥がし前へ運ぶ力に、チームは何度も救われた。

 

スパーズでのデビュー以来のデンベレのドリブル成功率は驚異の77.87%で、これは200以上のドリブルをしたプレミアの他のどの選手よりも高い。さらに昨シーズンに記録した84.2%はヨーロッパ5大リーグのどのドリブラーよりも高かった。

 

 

また、パスにおいても偉大な記録を残している。2016-17シーズン、プレミアリーグで1000分以上出場した選手の中で最も高いパス成功率、91.9%を記録した。

 

https://twitter.com/Squawka/status/883371533552427008?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E883371533552427008&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.squawka.com%2Fen%2Fnews%2Fhow-mousa-dembele-became-the-premier-leagues-near-untackleable-midfielder-at-spurs%2F1076367

 

特にデンベレの活躍で記憶に新しいのは2018年2月のチャンピオンズリーグ、ユベントス戦1st legだろう。

 

タッチ数、パス数、タックル数はチーム内トップ、一人で10.3%のポゼッションを記録、95%のパス成功率を誇り、1度もボールを失わなかった。開始早々に2点を失い絶望的に思われたアウェーゲームでの貴重なドローに最大限の貢献をした。

 

試合はデンベレによって支配されていたといっても過言ではなかった。

 

さらに、パスやドリブルに加え、持ち前のフィジカルを利用したディフェンスは、時にファウルともなったが相手の攻撃の芽を摘む強靭なものだった。おそらく本人にとっては全くファウルを犯している自覚はなかったろう。それくらい彼は規格外のフィジカルを備えていた。

 

Mousa から Moussa へ

31歳で迎えた今シーズン、これまでに増して怪我に悩まされた。

 

シーズン序盤、大腿の負傷で4試合の離脱をし、復帰するも今度はウルブス戦で足首を故障し、長期離脱を余儀なくされた。

 

スパーズの層の薄い中盤にとって、デンベレの離脱は非常に大きな痛手だった。

 

しかし、デンベレとワニャマが離脱したスパーズの中盤に救世主が現れた。

 

デンベレの負傷を受け、以前に増して出場機会を与えられた選手がいる。それはムサ・シソコ、”もう1人のムサ” だった。

 

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シソコは2016年夏にニューカッスルから加入して以来、ほとんどファンの信頼を得られぬまま2年が経過。売却の報道も後を絶たなかった。

 

「今日もベンチを暖めてな」「ニューカッスルに帰れ!」「観戦楽しめよ」「3000万ポンドが無駄だった」

 

このような言葉がサポーターから浴びせられた時期もあった。

 

それでもシソコは当時の批判を「フットボールはそういうものだ、批判も受け入れなければならない。ただひたすら我慢して真面目に取り組むしかないんだ。」と振り返っている。

 

主に2列目のワイドでプレーし、10月にウェストハム戦でラメラのゴールをアシストしてから自信をつけたのか、シソコは11月以降デンベレの代役として3列目に抜擢されると期待に応え、パレス戦やチェルシー戦、インテル戦、と好調を維持し、大きな働きを見せた。

 

シソコもまた、デンベレのようなハードワークで中盤を制圧し、一番の武器である前への推進力でスパーズの攻撃の起点にもなった。

 

チャント

シソコの活躍は目覚ましいもので、ファンは賞賛と前言撤回を繰り返していたが、私個人としては、一つ不満があった。

 

それはチャントだ。

 

シソコのチャント、”Wake Me Up Before You Go-Go”の替え歌は昨シーズンのマドリードで初めて歌われたようだ。

 

しかし、今シーズン、デンベレの離脱後は歌いやすさからか、”Seven Nation Army”に合わせて、「Oh~ Mousa Sissoko~」と歌われることも多い。

 

サッカー界では、ロシアW杯で入場曲に使われたほど馴染みのある曲だが、スパーズではデンベレのチャントのはずだった。

 

力強いメロディーは屈強なデンベレにピッタリで、他の選手には使われてほしくなかったのが正直なところだった。

 

負傷中のデンベレが少しずつ離れていくような、そんな気がしてならなかった。

 

別れ

迎えた1月の移籍マーケット。中国への移籍が決まった。

 

トレーニングに復帰していたため、せめて最後にスパーズでのラストマッチを、とスパーズサポの誰もが願っただろう。しかしそれは叶わなかった。

 

昨年の夏にはインテルからのオファーを断っていたデンベレ。契約満了となる2019年夏、フリーでビッグクラブへと移籍するだろうとも見られていた。

 

しかし彼は最後までスパーズ想いだった。

 

「もしスパーズを離れることになるのなら、イングランド内のチームには行かない。なぜならトッテナムが俺のチームだからだ。」

 

以前そう話したデンベレは、復帰間近で今季も引き続き活躍が十分期待されたにもかかわらず、契約を半年残して国外へ移籍しクラブに移籍金を残したのだ。

 

スパーズで過ごした6年半、249試合出場。レドナップ政権が終わった2012年からスパーズの躍進を最前線で支えてきた、現代スパーズのレジェンドだ。

 

 

 

 

ありがとう、ムサ・デンベレ。

 

おわりに

デンベレが退団したスパーズの最初の試合は1月20日、デンベレの古巣フルハムとの試合だった。

 

キックオフ直後、クレイヴン・コテージに響き渡った現地スパーズサポーターの”Seven Nation Army”はデンベレに向けて捧げられた。

 

この曲を聴けばいつでも懐かしき彼との日々を思い出すことができるだろう、そう思えた瞬間だった。

 

 

Ohhh~ Mousa Dembélé~~

 

 

 

Ohhh~ Mousa Dembélé~~

 

 

 

Ohhh~ Mousa Dembélé~~………

 

 



【了】

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