スパーズファンが若き8番ハリー・ウィンクスに抱く期待と不安

       

「イングランドのハリー」と言われると、誰が思い浮かぶだろう?

天邪鬼でない多くの方は恐らくイングランド代表・現キャプテンを思い浮かべるはずだ。14-15シーズンからハリケーンのように急成長し、ロシアW杯ではまさに台風の目となった、あの男のことである。

あるいは、フィジカルの鬼とも言える、こちらもW杯で脚光を浴びたレスターシティー不動の巨漢CBかもしれない。

書き手

2010年前後の攻撃陣に徐々に引き込まれていきスパーズサポとなった大学生。

はじめに

しかしスパーズサポからすれば

「いや待てよ、俺らの8番のハリーを忘れてもらっては困る」

という気持ちだ。

今回は、そんなスパーズサポが愛してやまない”リトルイニエスタ”こと、ハリー・ウィンクスにスポットライトを当てる。

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脚光を浴びたウィンクス

ウィンクスは、6歳の頃にアカデミーに入ってからスパーズ一筋の22歳。16-17シーズンにプレミアデビューを果たし、2017年10月にイングランド代表に初招集された。

彼には、細かいボールタッチや、相手に囲まれてもスルッとコンパクトなターンでマークをかわす俊敏性、独創的かつ正確なパスによるチャンスメイクなど、ポチェッティーノ監督に”リトルイニエスタ”と言わしめただけの、光り輝くものがある。

それはこの動画をご覧いただければお分かりいただけるだろう。

敵のプレスを華麗に避けて前を向く姿や、前線へのグラウンダーパスからロングボールなど、プレーの一つ一つにイニエスタのようなサッカーセンスを感じる。

このまさに知性的なサッカーセンスこそがウィンクスの強さなのだろう。

よく”クレバーな選手” ”知的なプレイヤー” といった表現が使われるがそれがぴったりな選手なのだ。

現状と期待

今シーズンはライアン・メイソンの退団から欠番となっていた8番を背負い、スタメンでも数試合プレーしている。

中盤に負傷が相次いだ10月以降は特に出場機会が多くなっている。

ただプレーにはまだ波がある。

CLグループステージ第2戦 ホーム・バルセロナ戦の前半はワニャマと共に中途半端なポジショニングや軽い守備で相手に中央を自由に使わせ、またディフェンスラインからボールを引き出すものの囲まれて奪われるシーンもあり、ウィンクスらしい縦パスはほとんど見られなかった。

ただ後半になるとギアが上がり、バルサ相手に前述したイニエスタのようなドリブル突破を見せたり、メッシから完璧なボール奪取をしてすぐさまケインの足元へ鋭いパスを送ったりと、少しずつ自身を取り戻せるようなプレーができていたと思う。

そしてこの試合を境に徐々にコンディションを上げており、先日後半途中から出場したシティー戦や2度のハマーズとのダービーでは縦へ運ぶドリブルやパスなどのプレーが多くみられた。シーズン中盤、終盤へ向けて我々の期待はますます膨れ上がっている。

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そんなウィンクスだが、ポジションは基本的にボランチでの出場が多くなっている。

現在スパーズのフォーメーションは4-2-3-1か4-4-2が多く、真ん中の2枚には基本的にウィンクス、ワニャマ、ダイア―、デンベレのうちの2人が入る。デンベレは慢性的なケガのせいで安定したパフォーマンスを発揮できておらず、今季限りの退団も噂されている。

ワニャマは2シーズン前ほどの安心感がなく、パスも上手く前に供給できず心もとなさが拭えない。

となるとやはり、現状ではイングランド代表でも先日共にスタメンに名を連ねた、ダイア―とウィンクスのコンビがベストな選択になりそうだ。

ダイア―が守備的な役割を主にこなす分、より一層ウィンクスには積極的に縦への意識をもって攻撃参加し、前の4人や高い位置の両SBに効果的なパスを供給してほしい。

1列前のエリクセンやアリといったアイデアや技術の優れた選手との歯車が噛み合えば、ウィンクスはさらに生きてくるだろう。一方そのエリクセンとアリの2人は離脱が多く、分かりやすいラストパスの出し手がいなかったために彼らの離脱した10月の数試合は得点の少なさに悩んだ。

だからこそ、ウィンクスには積極的な攻撃参加、センス溢れるチャンスメイクをもっと期待したい。

また、ウィンクスは若さゆえなのだろうか、良くも悪くも無難なプレーが多い印象がある。

ミスの少ない良い選手なのだが、優等生MFは時に試合から消えてしまうことがあるのだ。無難な横パス/バックパスばかりになり、持ち前の”イニエスタらしい”相手を振り切るドリブルや縦パスを見せられない日が多いのは事実だ。

大舞台でもっと積極的にボールを引き出し、運び、散らす前への意識を持ってプレーするようになれば一皮剥けたと言えるだろう。先が長い選手なので、これから経験を積んでステップアップしてほしいというスパーズサポの期待は計り知れない。

スパーズの8番と言えば…

そして背番号について少し上でも触れたが、スパーズの8番といえばスコット・パーカーという熱い男の名前が強く記憶に残っている。

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パーカーがスパーズやイングランドの中盤で活躍していた頃、ウィンクスはまだアカデミーでプレーしていた。

当時からパーカーに憧れの眼差しを送っていたウィンクスは、度々ピッチ内外でアドバイスをもらってきたという。

そして今ウィンクスはパーカーと同じ8番を背負って同じポジションでプレーしていると思うと感慨深いものがある。

近年、特に劣勢な試合を観ていてよく感じるのは、

「このままでたまるか、挽回してやろう」

と大きな声を出し、気持ちの出たプレーでチームを鼓舞するかつてのパーカーのような熱血漢のような選手が少ない。これはスパーズに限らず、プレミア全体に言えることなのかもしれない。

もちろんスパーズには、ケインやラメラ、ルーカスが前線でパッションを見せチームの息を吹き返させる場面も見られる。

しかし、闘う選手はチームの中央にいてほしい……、個人的には。

憧れのCMF・キャプテン・8番パーカーの跡を継いだ今、どちらかといえば穏やかな性格のウィンクスだからこそ、気迫のこもったプレーをチームの中心で見せてほしい。自身の全力のプレーで周りにもプラスの影響を与えるような情熱を持ってほしい。

我々は過剰なほどの期待を込めている。なぜならウィンクスにはそれに応えてくれる素質が備わっていると確信しているからだ。

ただ、不安も…

我々のウィンクスに抱く最も大きな不安といえば、フィットネスの問題だ。

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輝かしい活躍を見せ、これから、という時に足首のケガを患う。16-17シーズンは2か月10試合の離脱、17-18シーズンは3月から夏までの5か月の離脱を含めて17試合を逃した。

スパーズではW杯出場選手の疲れが蓄積している影響なのか、10月、主力選手たちの離脱が相次いだ。

そんな中ウィンクスが試合にフィットしてフル出場もできていたことが非常にチームの助けとなったのは、間違いない。今季こそは長期離脱のない、彼にとっての飛躍のシーズンにしてもらいたいとつくづく感じている。

また、ウィンクスはイングランド代表にも招集されており、10月のUEFAネーションズカップ・スペイン戦では出場停止のヘンダーソンに代わって背番号8をつけた。

出場機会が増え、スパーズサポのみならず、ユーロ2020予選に向けてフットボールファン全体からの重圧も少なからずかかっていくだろう。

ここでそれに応えるパフォーマンスができないと、自信を失ってしまう可能性もあるのだ。試合に出られる今だからこそ、ウィンクスには積極的になって、”脱・優等生”を目指し、確固たる自信を自分の中に植え付けてほしい。

おわりに

ウィンクスには特別な期待を抱いている我々スパーズサポだが、それはスパーズ一筋で貫く彼のことを愛しているからに他ならない。いつまでも8番のユニフォームに袖を通し、一皮も二皮も剥けてスパーズの”熱きイニエスタ”となりピッチを駆け巡るウィンクスを見続けられると信じている。

Come on you, Winksy!



【了】

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