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10月28日に行われたプレミアリーグ第10節。
公式戦11連勝と勢いに乗るアーセナルの流れを止めたのは、
同じくロンドンをホームとする中堅クラブの雄、クリスタルパレスだった。
Crystal Palace Player Ratings: Arsenal (H) #CPFC | https://t.co/szHyTVzZMB pic.twitter.com/k6xKQIZvaz
— Read Crystal Palace (@ReadCPFC) October 29, 2018
思い起こせば昨年末に行われたプレミアリーグ第21節。
当時プレミアリーグ18連勝という偉業を成し遂げたマンチェスターシティの連勝記録をストップしたのもパレスだった。
この2試合に共通していた「連勝ストッパー」パレスの強みとは何なのか。
上記の2試合からわかるチームの特徴を守備面と攻撃面の両面から紐解いていく。
守備面:シンプルかつ堅牢な4-4-2のブロック及びネガトラの速さ
ロイ・ホジソンが昨年パレスの監督に就任して以降、好まれて使われているのが4-4-2もしくは4-3-3のフォーメーションだ。ディフェンスラインは基本的に低く設定されており、前線の選手も自陣まで下がる。積極的な守備参加が各選手に求められるシステムだ。
特に奇抜なことをしているわけではないものの、中盤とディフェンスラインの距離感には定評があり、アタッキングサードでの局面やボックス内での守備の強固さは中堅クラブ随一。
昨年で言えばスコット・ダンとジェームス・トムキンスのコンビ、今年でいえばママドゥ・サコとジェームス・トムキンスのコンビ、といった2CBは共にフィジカルも強く、空中戦にも強い。
裏に抜けられた時のスピードにはやや不安が残るが、ボックス内での対応は比較的セーフティなものも多く高水準だ(たまにサコがやらかすことはもはや想定内)。
また、ボールを失った後のネガトラの速さも強みの一つ。いち早く帰陣して4-4-2のブロックを形成し(4-3-3の場合は左に立ち位置をとることの多いザハが守備時に中央にスライドし、左インサイドハーフの選手が左サイドにスライドするケースが多い。)、おのおのがどこのスペースをカバーすべきか徹底されている。
決まり事もある意味「シンプル」であるため、選手が戸惑って位置取りを誤ってしまうことも少ない。
キャプテンのルカ・ミリヴォイェヴィッチやシェイク・クヤテ、昨年まで在籍していたヨハン・キャバイエはいずれも豊富な運動量を兼ね備えておりスペースカバーに定評のある選手。
「シンプル」だからこそ、攻守のかじ取り役を担う彼らの役割が非常に重要なのだ。
攻撃面:前線の「個」の強さ
先述した守備面に関しての決まりごとは中堅クラブであれば、ある種「当たり前」のことであり、「戦術」という観点からみると他チームと比べてそこまで大きな差は出ないかもしれない。
しかし、他の中堅チームと一線を画すものがある。それは圧倒的な前線の選手の「個」の力である。
その中でも特に強烈な印象を残しているのがパレスの大黒柱ウィルフレッド・ザハだ。今季チームの総得点である7点のうち3点を決めており、チームの得点のほとんどに絡んでいる。
マンチェスター・ユナイテッド時代の彼しか知らない人からすれば、「比較的足の速いドリブラー」という印象しかないかもしれない。しかしもはや彼はそんなレベルをとうに超越している。
裏抜けできる足の速さはもちろん兼ね備えているが、それに加えて圧倒的に変化したのが自身の「体幹」を使ったボールキープの部分だ。
体格の大きいCBに寄せられても独特の筋肉の使い方でうまく体をコントロールし、一瞬のスピードで相手を置き去りにする。一見すると体は細くなかなか注目されづらい部分ではあるものの、彼の「キープ力」にも注目して観てほしい。
ドリブルもここ数年でさらにバリエーションを増してきている。その独特すぎる間合いには相手の守備陣だけでなく味方ですらも困惑してしまうほど。
しかし、彼と1対1でマッチアップしてまともに止められるディフェンダーはそう多くはない。
とにかく一人でなんでもできてしまう「ザハ」という破壊兵器。昨年には「得点力」というラストピースも搭載され、いよいよ手が付けられなくつつある彼にはビッグ6のファンの方も心してかかるべきだろう。
また忘れてはいけないのはクリスティアン・ベンテケというフィジカルモンスター。昨年は深刻な得点力に悩まされ、今年は膝の手術の影響で年始まで離脱が決まっているなどいまひとつな彼だが、本来のポテンシャルは高い。
得点力の減少は気がかりだが、持ち前のフィジカルの強さは健在。昨年のシティ戦でも得点こそなかったものの、前線の起点として相手CBにプレッシャーを与えていた。彼が復活すれば、中堅クラブ随一の「怪物」2トップが誕生する……。
昨年からの変化
ここまで過去2戦で目立っていた攻守の特色を記述してきたが、今年と去年のチーム状況の変化についても軽く触れておく。
まず負傷離脱したベンテケの穴は、現時点ではスウォンジーからやってきたジョーダン・アユ―が埋めている。ベンテケのようなキープ力はないものの、献身的な姿勢が魅力的。
当初はただ走り回っているだけでなかなか周りと連動する場面が少なかったものの、アーセナル戦では守備時に中盤の2枚に対してしつこく追いかけまわることでプレスの起点となり、徐々にフィットしてきている印象を受けた。次節のチェルシー戦では起点となるジョルジーニョを徹底的に追いかけまわしてほしい。
攻撃面では思い切りのよい仕掛けを随所に見せるものの、最後の精度がいまひとつという印象。ベンテケが復帰して以降は相手チームによって使い分けるのも面白いかもしれない。
また中盤では昨季限りで退団してしまったヨハン・キャバイエの穴をまだ完璧には埋められていないというのが現状だ。クヤテやジェームズ・マッカーサーは運動量はあるものの、視野が狭く縦パスや散らしのパスでも雑なものが目立つ。
その反面マックス・マイヤーは出場すれば質の高いプレーを随所に披露。他のパレスの選手ではできないような視野の広さを生かした展開力や、思い切りのよいミドルシュートも持ち合わせている。ただ強度の低さからか完全にホジソンからの信頼は得られていない模様。
守備面の「シンプル」さ+攻撃陣を引っ張る「個」の強さ=「クリスタルパレス」というのが筆者の中の現時点での公式だ。
このチームにはジャイアントキリングを起こせる要素が少なからず揃っている、と筆者は信じている。普段なかなかパレスの試合を見ない、というビッグ6サポーターの方も当たった際にはこの公式を思い出してもらえると幸いだ。
一見単純な「公式」がビッグ6を止める一つのカギなのかもしれない。単純な数値では測りとれない魅力がこのチームにはある。