西公父太郎
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ここ、4試合は本当に辛かった。
優勝を経験していた監督。大量の補強費。浮上への期待。
これだけの補強をしてもダメだったら、どうやればプレミアで上にいけるのか、と真剣に悩んだ。
友人の話だが、
2006年のFAカップの決勝、ジェラードに決勝のゴールを決められて、当時まだ子供だったがそれでも号泣していたような15年来の熱狂的なサポーターですら、観戦を辞めることを考えたという。
自分も、試合は追ってはいたが、ツイートは少なくなった。
三年連続の低空飛行と、期待を裏切られた絶望感にやられていた。
何も面白くなかった。内容も全くダメだった。
そんなチームが、5戦目でやっと勝った。
快勝だった。しかも、無敗のエバートンに対して。
ウェストハムの変化
ウェストハムが勝てた最大の理由、それは、ペジェグリーニの妥協だろう。
新監督が目指していたのは、ハイプレス、ショートカウンター、そしてショートパスのサッカー。
一方のウェストハムはしっかり守って、豪快なカウンターを決めて、あまり細かいビルドアップはしないプレースタイルが浸透しきっているクラブだ。
ビッグサムと昇格した時も、ビリッチとEL権を手にした時も、モイーズに残留を決めてもらった時も、しっかりリトリートで守り、放り込みまでとは行かないが攻撃は完全に前線に任せていた。
ペジェグリーニは、ハイプレスなどの理想を一度諦めて、守備ブロックの安定を優先したことが初勝利につながった。
具体的な方法は、システムの変更だ。
今まで[4-4-2]や[4-2-3-1]のシステムでやって来た。
しかし、最大の問題点は、バイタルエリアにあった。
ボランチ2枚では、全く頼りなかった。
そこでシステムを[4-1-4-1]に変更した。
このシステム変更の最大の特徴は、相手のビルドアップを追うプレーヤー1人を減らし、バイタルエリアで守る選手が1枚増える点だ。
その「1」に入ったのはデクラン・ライス。弱冠19歳の若手の起用はかなり効いた。
今まで弱点になっていたDF前のスペースに蓋をすることができた点は大きい。
典型的な「アンカー」の役割を果たしてくれたのだ。
しかも相手に距離を詰められても落ち着いてプレーすることができ、楔ののパスを入れるのもライスは得意としている。
結果としてウェストハムが本来得意とした中距離カウンターが彼のパスによって可能になった。
ライスの起用はチーム全体にいい影響を与えた。
アルナウトビッチも昨年のブレイクのきっかけにもなった裏に抜け出すような動きが多くなり、アンデルソンやオビアングなどのミッドフィルダーも攻撃の参加に専念できるようになった。
ウェストハムの課題
しかし、まだまだ課題はある。その課題は、クロスへの対応だ。
1点しか取られなかったものの、エバートンはサイドの攻撃から幾度もチャンスを作っていた。
エバートンの調子が良ければ、引き分けに持ち込まれていたかもしれない。
もう1つの課題は、センターハーフのノーブルだ。
生え抜きの選手に対してこんなことは言いたくないのだが、ノーブルが明らかに穴になっていた。
パスはズレるし、ボールも失う。
年齢的な問題なのか、明らかにハードワークだけの選手になっている。
ここにウィルシャーが入ればちょうどいいのだが、彼は怪我が多くて計算しにくい選手だ(現在も負傷中)。
このポジションに守備的なサンチェスを入れるのは適切ではないだろう。
ノーブルの復調か、ウィルシャーの復帰か、若手の台頭を願うしかない。
何より、エバートンはディフェンスラインを低くして戦うチームではなかったので、カウンターも発動しやすかった側面もある。
同じ様な戦い方を、どんなチームに対してもできる様になってほしい。
理想と現実
ペジェグリーニは最初に理想を掲げたのだろう。
ただ、理解しなければいけなかったのは、理想のやり方とチームのアイデンティティのすり合わせが必要だったこと。
やっと、ペジェグリーニのウェストハムが完成に近づき始めたような気がする。
次はチェルシー戦。サッリの元でうまくいっているチーム相手にあまりいい結果は期待できないが、先週よりは前向きになれそうだ。