西公父太郎
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サポーターのピッチ侵入事件が発生する直前の試合、
絶好調のリバプールに4-1で負けたのは、まだ「仕方ない」と肩をすくめられる。
しかし、絶不調だったはずのスウォンジーに
同じ点差の4-1と大敗した結果に対して肩をすくめるのは難しかった。
摩擦の始まり、本拠地移転
そんな状況で迎えたバーンリー戦。
残留圏に近い今の状況だけでなく、ここまでのフロントの振る舞いを考えれば怒りは募っていた。
直近のクラブの動きでいうと、冬の市場では残留圏争いをしている上に怪我人が続出していたのにもかかわらず、
移籍金総額はまさかの黒字で2,160万ポンド(約32億700万)。
タイミング的には資金を投下して、赤字でも選手をとりにいくべきだった。
サポーターの溜まったフラストレーションは、バーンリー戦でとうとう爆発した。
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今月10日にロンドン・スタジアムで行われたプレミアリーグ第30節のウェストハムvsバーンリーで、0-3での敗戦後に複数のウェストハムサポーターがピッチに侵入、コインや物を投げるなどの危険行為を働いた。これに対し同クラブは公式声明を発表。危険行為が特定された5人のサポーターのスタジアムへの立ち入りを生涯禁止とした。
今思うと、サポーターとクラブのすれ違いは問題は本拠地を移した時から始まっていた。
前の本拠地であったアップトン・パークには、クラブの歴史が詰まっていおり、スタジアムには感情的な思い入れがあり、クラブのシンボルである。
雰囲気が凄まじく、対戦する相手からすればボウレングラウンドは「ダンジョン」の様に感じており、サポーターの雰囲気が相手を飲み込んで勝った試合も段度もあった。スタジアムの回りも、ウェストハム
ファンが慣れ親しんだ「東ロンドン」を体現していた。
しかし、それをアクセスが便利で収容人数が多いスタジアムに移してしまった。
数年後にクラブを売るという意思があると噂される会長は、できるだけ支出を減らし、クラブの価値を上げておきたい。カネのために本拠地を移した、というのは火を見るより明らかだ。
ロンドンスタジアムはロンドンのショッピング街の中にあり、アップトン・パークの地元のような雰囲気とは違い大勢の人たちがウェストハム以外の目的でやってくる。
フロントの「嘘」、三つを抜粋
ウェストハムのサポーターは、会長のDavid Sullivanと副会長のKarren Bradyクラブから多くの約束を伝えられていた。その内の三つだけを挙げよう。
まず、ロンドンスタジアムは観客席がアップトン・パークと比較してピッチから近くなると伝えられていたのだが。
結果アップトン・パークと比べて遠くなってしまった。サッカーのために建設されたスタジアムでもないため、座席はピッチからかなり遠く、一部ファンは「望遠鏡でも持ち込まなければボールにゴールが入
ったかもわからない」と言っている。
二つ目に、「シーズンで20ゴールをマークできるようなストライカーが必要だ。そのためには、3000万ポンドは必要になる」と伝えられていた。
結果、本拠地を移して最初の移籍市場やってきたストライカーはローン移籍でやってきたザザ。結果は、8試合に出場して0ゴール。
そして次の移籍市場でやってきたのがハビエル・エルナンデス(通称チチャリート)。獲得に使用された1600万ポンドは、必要とされていた費用の半分近くでしかない。
ピークを過ぎた29歳のゴール数でのキャリアハイは二年前にレバークーゼンで記録した17ゴールであり、サポーターの期待を若干下回ってしまった。
一応そのシーズンのコンペティション全てを含めれば20ゴールは越えているが、チチャリートにプレミアで20ゴールは期待するのは難しい。
そして、最も大きくサポーターたちを裏切ったのが「どの様な状況でも、ウェストハムの試合を優先するだった」。この約束は、本拠地を移した翌年になって早速破られてしまった。
なんと、2017年世界陸上競技選手権大会が行われたため、ウェストハムはシーズンが入ってから1ヶ月も本拠地を使用できなかった。
永久処分となった5人。
実は、試合前にスタジアム周りでデモ行進が行われる予定だったが、それが原因も発表されずに中止になってしまった。
デモという合意の場で吐き出そうとしていた怒りの感情の捌け口が絶たれてしまったため、その怒りがスタジアム内での会長に対するチャントや少数によるピッチ内への侵入と言う形で出てしまった。
その中で侵入を決行した5人は無期限でウェストハムのホームとアウェイの試合を観戦できないという「永久処分」を受けた。
確かにピッチに侵入するのは正当な行為ではないし、永久的に来場を禁止にされても仕方が無い。
しかし、サポーターたちには選択肢がそう多いようには感じない。
侵入者たちの行為は、クラブへの抗議でもあったのかもしれない。