クリスタルパレスの変化から考える「老将ローテーション」の是非

今や順位の変動によってクラブの収益や指針が大きく変わる昨今のサッカー界において、

頻繁にトップチームの監督が入れ替わることは珍しくなくなってきている。

そんな中、近年「老将ローテーション」という言葉をプレミアリーグのサポーターから耳にすることがある。





老将ローテーションとは

この「老将」と呼ばれる指揮官は、ロイ・ホジソン、サム・アラダイス、デイヴィッド・モイーズ、アラン・パーデュー、というプレミアリーグのサポーターにとってはおなじみの指揮官を指し、

彼らは長年にわたって、様々なクラブを入れ替わるように指揮してきた。

彼らの求められる任務は大方決まっている。降格圏に沈んでいるチームの立て直し、及びチームの安定化である。

彼らはなぜ様々なクラブから必要とされ、結果を残してきたのか。リーグ開幕から無得点で7連敗という、今年のクリスタルパレスの危機的状況を切り抜けた「老将」の一人であるロイ・ホジソンがパレスにもたらした変化を見ていくとともに、

「老将ローテーション」の意義を考察していく。

(本記事はpremierleague.comに掲載されている記事(2017年12月22日付)を翻訳および修正したものも一部含まれています。)

ホジソンがパレスにもたらした3つの変化

ホジソンはパレスの監督に就任した後、大きく3つの変化をチームにもたらした。

まず1つ目に挙げられるのが、フォーメーションの変更である。前任のフランク・デ・ブール政権で主に採用されていた3バックや4-3-3とは異なり、4-4-2の形を主に採用することで、複雑な守備の位置取りを選手に要求することがなくなった。その結果両サイドの守備バランスが向上し、粘り強い守備が可能になった。

2つ目に挙げられるのが、守備組織の強化である。ホジソンの下で、選手は徹底的に守備の練習を行い、独自の組織化された守備戦術が落とし込まれた。戦術の浸透に時間はかかったものの、45分に1点取られていた失点ペースは、81分に1点の失点ペースまで減少した。

アンドロス・タウンゼント、ウィルフレッド・ザハ、クリスティアン・ベンテケ等の前線の選手に前線からの守備を徹底させチーム全体に守備の波及効果をもたらすと、キャバイエはモンレアルに続いてリーグ2番目となる42回のインターセプトを記録した。

3つ目に挙げられるのが、体力面での向上である。運動能力の増進に定評のあるホジソンの下、パレスの選手たちは1試合に平均して40のスプリント数を記録しており、特に試合の後半においてその強さを見せつけている。

例えば、2017年10月14日の対チェルシー戦以降、パレスはラスト10分で5ゴールを決めており、失点はその時間帯にわずか一点しか決められていないというデータが記録されている。(premierleague.com 2017年12月22日付より)

老将ローテーションの意義とは

前述した変化により、パレスは降格圏を抜け出し見事残留圏内をキープしている。だが、そんなホジソンにも批判の声がたびたび浴びせられているのも事実だ。首をかしげてしまうような選手起用や選手交代が散見されたり、単調なロングボールを蹴るだけの創造性がないサッカースタイルには数十年前のサッカーだと揶揄されることもある。

しかし、その批判以上に結果を残してきたホジソンは褒められて然るべきだ。昨年12月には、当時リーグ戦18連勝を記録していたマンチェスターシティをあと一歩のところまで追い詰め(結果は0-0)、負けはしているものの内容的に強豪相手に見ごたえある試合をするなど、非常に選手たちの熱意を感じることができる試合が多い。

また、今シーズンけが人が続出したチーム状態の中、3月のクラブ月間最優秀選手に選ばれる活躍をしたアーロン・ワン=ビサカという若手選手を発掘する等、選手の目利きにも長けている。そして温厚な性格で選手からの信頼が厚い、というのもポジティブな点の1つである。

本記事では、ホジソンとパレスというチーム関係から「老将」の存在意義を考えてみたが、「老将」が持っている共通の強みとして「守備の徹底」と「経験値」があげられるだろう。彼らが率いるチームは古典的ではあるものの、常にハードワークを心掛け、タフさを兼ね備えている印象が強い。また、長年プレミアリーグで戦ってきた経験に基づいた試合の進め方には「さすが」と思わせるような部分がいくつもある。

現在のプレミアリーグでは、中堅クラブであっても、エディ・ハウ率いるボーンマスが華麗なパスサッカーを展開する等、ますます戦術が多様化している。

しかし、放映権料の値上がりによりクラブの収益が上がるなど、プレミアリーグに残留することがますます重要視されている中、別の異なるリーグから新しい監督を獲得するよりも、古典的な「老将」を獲得することの方が遥かに中堅クラブにおいてはローリスクであり、現実的な策になっているのだ。

事実、彼らはチームの立て直し方を知っており、それを結果で何度となく示してきている。「老将」という名刀は当分錆びつくことはなさそうだ。

 



【了】

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東京在住の大学生。昨年春にロンドンに短期留学した際、セルハーストパークで試合を観戦。選手や町、サポーターの雰囲気等クリスタルパレスの魅力にどっぷりと浸かり、以降はパレスの試合をほぼ全試合視聴&応援。密かに編集・ライター業やメディア業界にも興味を持っている。