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プレミアリーグ第26節
リバプール対トッテナムの注目の一戦は、
2-2のドロー決着だった。
疑惑の判定
試合終盤の審判のジャッジには疑問が残る形となってしまい、
ゲーム内容よりもジャッジに論点が向けられてしまっていることが少し残念なほどに、両チームが繰り広げたゲーム内容は非常に濃厚なものだったと感じた。
両チームがそれぞれ採用したゲームプランを軸に、この一戦を振り返って行く。
トッテナムのゲームプラン
トッテナムの予想フォーメーションは、4-2-3-1の陣形だったが、ゲームが始まってみるとそれは異なった。
中盤のダイヤモンド構成については、上記写真の通り。
- リバプールの中盤を経由するビルドアップを封じること。
-
中盤をダイヤモンド構成にすることで、選手間の距離を近くし、ショートパスのコンビネーションでリバプールのハイプレスをかわすこと。
トッテナムのゲームプランを逆手に取ったリバプールのプラン
しかしリバプールは、トッテナムのゲームプランを逆手に取り、試合を進めた。
そのため、トッテナムが封じたかったビルドアップエリアでの勝負を避けられてしまった。
またトッテナムが採用した構成の最大の弱点とも言える、サイドに生まれるスペースをうまくリバプールは活用した。
このシーンを見てもらいたい。
ヘンダーソンがルックアップしたタイミングで、逆サイドへ展開したシーンである。
トッテナムは、中盤がダイヤモンド構成となるため、中盤3枚がスライドでボールサイドに寄る。
従って、逆サイドへ展開されたときに、逆サイドのスペースが空きがちとなってしまう。
そこのスペースへ素早く展開することで、サイドでの数的優位を容易に作り出せる。
このようにリバプールは、サイドでの起点作りに成功していた。
リバプールの前半見られたチャンスシーンでは、サイドを起点とした攻撃からチャンスを作り出すことができていた。
リバプールのゲームプランによって、中盤をコンパクトにして後方からのビルドアップを封じたかったスパーズのプランは、完全に裏を欠かれてしまった。
リバプールが前半優れていた最大の理由
また前半のリバプールが特に際立っていた点として、トッテナムのビルドアップを完全に封じていたという点が挙げられる。
トッテナムは中盤をダイヤモンドに構成した狙いとして、中盤での素早いテンポでボールを回し、リバプールのハイプレスをかわしたかった。
しかし、リバプールは持ち前のハイプレスによって、トッテナムの中盤〜最終ラインの自由を奪い続けた。
そのようなシーンをいくつかピックアップして、解説していく。
シーン①
特にデンベレに対するプレッシングを強めることで、そこをボールの奪いどころとして設定していた。
具体的には、デンベレがボールを持った時に、フィルミーノとセンターハーフの1枚が必ず前へ出てアプローチすることで、デンベレから自由を奪った。
シーン②
このシーンもトリッピアからデンベレへの横パスをヘンダーソンが狙っていることがわかる。
デンベレは、フィジカルに優れ、ドリブルで持ち運ぶことができる反面、比較的ボールを持ってから、次のプレー選択の判断が遅い。
その特性をうまく利用し、デンベレへのプレッシングを強め、そこでボールを奪うことで、そこからのショートカウンターもリバプールの狙いの1つであった。
シーン③
このシーンでは、リバプールの連動性に着目してもらいたい。
デンベレにボールが入った瞬間に、デンベレが取れる選択肢をほぼ消すことができている。
このように前線から中盤、最終ラインまでかけた連動したプレッシングこそ、リバプールの真骨頂とも言える。
このようにトッテナムはリバプール戦に向けて、用意してきたプランが機能せず、リバプールは自分たちが得意なプランを貫くことで、試合の主導権を握った。
そんな構図の前半だったと言える。前半のリバプールはパーフェクトと言えるパフォーマンスだったと個人的には思う。
後半のトッテナムに起きた変化
では、後半に目を向けて行く。
まず先手を打ってきたのは、トッテナムだった。
後半開始からダイヤモンド構成の選手配置を変更してきた。
具体的には、トップ下にアリを配置し、左インサイドハーフにエリクセンを配置し、2人の並びを変更してきたのである。
この狙いは、エリクセンをより低い位置に配置することで、前半うまく機能しなかったビルドアップを助ける役割を与えることである。
後半のリバプールに起きた変化
それと同時にリバプールにも変化が起き始める。
徐々に機能していた前線から中盤にかけたプレッシングが機能しなくなり始める。
特にトッテナムのセンターバック・デンベレへのプレスがかからなくなり、
ボールホルダがボールを持ち運び、縦パスを供給できる機会が増えていった。
ここについて解説して行く。
シーン①
前半はヘンダーソンが前へ出ることで、封じることができていたビルドアップを前へ出ることができなくなり始めたシーン。
このシーンでは、サンチェスが縦パスを通して、中盤ラインをあっさりと越されてしまった。
シーン②
ダイアーに対して、ヘンダーソンとミルナーがプレッシングをかけるも、プレッシングの遅れから、逆に中盤と最終ライン間のスペースを利用され始める。
またチャンのスライドも遅れているので、そこのスペースをカバーし切れない状況に。
シーン③
リバプールは前線からプレッシングをかけるも、中盤ラインの押し上げが間に合っていないため、デンベレへのプレスがかかっていない。
前半であれば、デンベレに対して1枚インサイドハーフがプレスできていたが、
この時間帯から前線ラインと中盤ラインの間延びがより際立つようになる。
シーン④
近い距離に選手が密集しているものの、デンベレへのアプローチに行けていない状況。
またフィルミーノの位置にも注目してもらいたい。
前半は、デンベレに対して、フィルミーノ+センターハーフでプレッシングできていたが、 フィルミーノもプレスバックに戻り切れない状況になりつつある。
リバプールのプレッシングが機能しなくなった理由
リバプールはなぜこのような状況になってしまったのか?
その理由は、リバプールがチョイスしたゲームプランにある。
リバプールがチョイスしたゲームプランをもう1度整理する。
・中盤を省略したハイボールを使用。
・前線から中盤にかけた連動したプレッシングによるトッテナムのビルドアップを封じる。
この2点が機能していたことで、リバプールペースの前半だったと言える。
しかし一方でこのプランの最大の弱点は
90分間の持続が難しいことだ。
このゲームプランは、中盤3人と前線3人にかかる負担が非常に大きい。
特に中盤3人は、ハイプレスのみならず、中盤を省略したハイボールを多用していたことで、前線ラインとの距離を埋める必要があり、長い距離のランニングが頻繁に求められていた。
中盤選手の役割過多によって、前半できていたことが徐々にできなくなってしまい、一方的なトッテナムペースになってしまったのだ。
ただそんな状況下でもボールを保持する時間を長くし、ゲームコントロールする時間を作ることができれば、
また違った展開になったが、トッテナムが前線からプレッシングを継続できたことで、それを許さなかった。
試合スタッツからの分析
トッテナムは、600本近いパスを繋いでいるが、リバプールはその半分の300本程度。
ポゼッション率もトッテナムは70%近い数字に対して、リバプールは、30%に留まっている。
リバプールがいかにショートパスを繋げていなかったかというのは明白である。
まとめ
リバプールは、自分たちがチョイスしたゲームプランを完全に遂行できた前半に対して、
後半は自分たちがチョイスしたゲームプランがジャブのように利きはじめ、機能不全に陥り、
結果的に自分たちが苦手とする受けに回るスタイルで最後まで守り切れなかった。
一方で、トッテナムは、予想していたゲームプランの裏をかかれ、機能しなかった前半に対して、そのプランを粘り強く継続したことで、自分たちのゲームプランがハマり始め、ペースをつかみ、最終的にドローに持ち込んだ。
もちろん得点シーンは、ワニャマ、サラーそれぞれのスーパーゴール、そして疑惑のPKなど、今回考察した所以外から生まれた要素が強いので、結果に直結した考察ではないものの、このような駆け引きが試合中に行われていたことは見逃せない。
そこも含め、個人的には今シーズンのプレミアリーグの中でもベストゲームの1つと言える内容・面白さが際立った一戦だっただけに、最終的にこの試合の主役が、審判団だったことが残念でならない。
書き手
【プロフィール】
プレミアリーグ愛好家。2000年頃から欧州サッカーを見始め、気づけばグーナーに。いつもサッカーの面白さの部分に着目しながら試合を見てます。サッカーの面白さを少しでも伝えていけたらと思ってます。— Football-Viewpoint (@fbvps0930) 2017年12月1日