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プレミアリーグ第16説マンチェスター・ユナイテッドvsマンチェスター・シティの頂上決戦。
マンチェスターダービーを例にあげて
モウリーニョがユナイテッドに叩き込んだ守備戦術を解説します。
ユナイテッドの2失点は、セットプレー絡みのミスによるもの。
1-2で敗戦を喫したものの
ユナイテッドは、流れの中からシティを封じることに成功したと評価することもできる1戦だった。
果たして、ユナイテッドの守備が機能していたのか?シティの攻撃に迫力が欠けていたのか?
ということで、今回はユナイテッドの守備にフォーカスをあてて、解説していきたい。
テーマ1:ユナイテッドの守備コンセプトとは?
シーン①
まずはこの試合でユナイテッドが採用した守備コンセプトについて解説をしていく。
このシーンでは、ロホがマークしていたスターリングをマティッチへ受け渡すシーン。
ロホはマティッチに対して、スターリングをマークするように指示。
それによって、マティッチがスライドし、スターリングをマークしにいく。
シーン②
このシーンでは、リンガードがフェルナンジーニョを見つつも背後にいるデ・ブライネへの縦パスのコースは塞ぐ。
スモーリングのエリアからデ・ブライネがポジションを修正したので、スモーリングはリンガードに対してデ・ブライネを意識するようにコーチング。
またユナイテッドの両ボランチはスターリング、シルバをそれぞれがマーク。
シーン③
このシーンではデ・ブライネのポジションが低いので、リンガードがデ・ブライネを背後でマーク。
両ボランチは、シティのインサイドハーフの位置にポジショニングする選手をそれぞれ掴む。
ユナイテッドのセンターバックは、あのエリアに入ってきた場合のみ、2人のうちどちらかでマークする。
このようにユナイテッドは3トップの中央に位置する選手をCBの2選手とリンガードでうまくマークを受け渡すことで対応していた。
一方でユナイテッドのボランチ2人は、シティのインサイドハーフに位置する選手をマンマーク気味で掴む。
これがユナイテッドのこの試合で採用していた守備コンセプトである。
シーン④
このシーンも同様。
デ・ブライネ、シルバ、スターリングに対して、リンガードがポジションを落とすことで3枚のフラットなブロックを形成することで対応。
シーン⑤
このシーンではデ・ブライネのポジションが少しCBのエリアに入ってきたので、
リンガードからCBへマーカーを受け渡し、デ・ブライネにボールが入った時にユナイテッドのCBがアプローチに行ける距離感を保つ。
エレーラはシルバに対してマンツーマン気味なので、ポジションの位置は低めだが、
CBとSBの間のスペースをカバーする役割も同時に兼ねていた。
このコンセプトを採用する代償として、シティのCBはノープレスな状況が多く、持ち運びが可能。
しかしユナイテッドは、そこにはある程度許容し、あくまでコンパクトに保てているエリアでボールを奪うことを目指す。
テーマ2:中盤と最終ラインの連動した守備
このコンセプトを採用していく上で、マーカーの受け渡しがポイントとなってくる。
そのため、中盤と最終ラインの連動した守備が必要不可欠である。
その点について、解説していく。
シーン①
リンガードがフェルナンジーニョへアプローチしたが、
シルバにパスを展開されてしまい、中央にスペースを与えてしまう。
前にスペースがあるので、シルバは縦へスピードアップする。
シーン②
このシーンでは、マティッチのファーストDFとしての対応が素晴らしかった。
デ・ブライネへのパスコースを遮断しつつ、シルバを横方向へドリブルさせる守備を意図的に行う。
目的としては、シルバをあのスペースへドリブルさせたいという目的である。
シーン③
シルバが先ほどのスペースへドリブルしてきたので、シルバのマークを受け渡しスモーリングが対応。
スモーリングのアプローチによって、シルバのプレー選択肢を限定される。
そのことで、エレーラはスターリングへのパスを予測することができ、そこでのパスカットを狙う。
このようにユナイテッドは、自分が守るべきエリアに侵入された時に、DFがアプローチして対応していた。
そのために、中盤がボールフォルダーへのアプローチで自分たちがボールを奪いたい方向へ誘導する守備をすることで、ユナイテッドの守備は機能していた。
この辺の中盤と最終ラインを含めた連動した守備が非常に良かった。
テーマ3:ユナイテッドの守備コンセプトの課題
シーン①
一方でユナイテッドが採用してきた守備コンセプトにおける課題もあった。
そのシーンについて解説する。
このシーンでは、デ・ブライネがスペースを空けるために前方へフリーランニング。
マティッチはその動きに合わせ、デ・ブライネをマークしにポジション修正。
デ・ブライネと入れ替わる形で、シルバがスペースでボールを引き出す。
ロホは自分のエリアから出たシルバのマークを離すが、リンガードがフェルナンジーニョを捕まえているので、マークの受け渡しがうまく機能しない。
シーン②
リンガードはシルバとフェルナンジーニョの2人を見なければいけない状況となる。
このシーンでは、ラッシュフォードorルカクがシルバorフェルナンジーニョのパスコースを限定できていれば、
どちら一方にリンガードはポジショニングが可能だった。
シーン③
このシーンでは、シルバにボールが入り、前を向かれてしまったことで、シティに数的優位を作られてしまった。
リンガードに対して、シルバとフェルナンジーニョで数的優位を作ることができ、リンガードの守備ラインを突破することが容易な状況を作り出す。
シーン④
このシーンでは、前のシーンでリンガードのラインを突破された後のシーンになる。
このように中途半端な位置でボールを持ち運ばれた時にユナイテッドは、ボールフォルダーに対するファーストDFが決まらない。
またスターリングがエレーラの脇でポジショニングすることで、エレーラが前へアプローチできない状況を作ることで、
エレーラのマーカーが定まらず、簡単にフェルナンジーニョへの持ち運びを許してしまっていた。
シーン⑤
ボールフォルダーへのアプローチが決まらないので、
このエリアでもマーカーが定まらず、エレーラが誰を掴むべきかが曖昧になってしまう。
ここがユナイテッドが採用した守備コンセプトにおける課題である。
テーマ4(おまけ):攻撃面でのポグバ不在の影響とは?
シーン①:
ユナイテッド自陣深い位置でボールを繋ぐシーンである。
マティッチが縦パスのコースを探し、エレーラがあのスペースでボールを受けるためにフリーランニングを開始する。
シーン②:
マティッチからラッシュフォードへ縦パスが入り、そのパスをラッシュフォードがポストプレーによって、前向きなエレーラにボールを預ける。
このシーンで、シティの中盤ラインを突破できているので、エレーラが前方にあるスペースに持ち運ぶことで、縦にスピードアップしたいシーン。
そうすることで、カウンターするチャンスに繋げることができる。
シーン③:
しかし、エレーラは縦への持ち運びは選択せず、ファーストタッチを横方向にしたことで、
シティの中盤ラインに戻られてしまい、スピードアップすることができなかった。
この辺りのプレー選択肢で、ポグバとエレーラの差が出たと感じたシーン。
ポグバであれば、あのシーンで前方向へのファーストタッチが選択でき、
フェルナンジーニョにスライドされてプレスをかけられても強引にボールを縦へ推進できる能力がある。
この点で攻撃面において、ポグバ不在の影響を感じた。
まとめ
ユナイテッドは、このように重要なダービーで守備に比重を置いた戦術を採用した。
そういう意味でもユナイテッドがポイント3を取るためには、失点しないことが前提の上で成り立っていたプランに思える。
ユナイテッドは高さに恵まれた選手が揃い、逆にシティは小柄な選手が揃っているという対照的な状況下で、
優位なはずのセットプレーで失点してしまったことが、大きくプランを崩してしまったに違いない。