プレミアパブ編集部
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ニューカッスルに日本代表FW武藤嘉紀の移籍が決まった。2015年、岡崎慎司以来の、日本人のプレミア上陸だ。
しかし、ニューカッスルというチームについて、詳しい日本のサッカーファンはそこまで多くないかもしれない。
そこで今回は「ニューカッスル・ユナイテッド ジャパン」という名前でのファンイベントの主催している鷲頭雄佑さんに取材を行った。本記事はそのインタビューの後編だ。
「ニューカッスル・ユナイテッド ジャパンとは」がテーマの前編は【こちら】
武藤のニューカッスル移籍が決定
Here's what Yoshinori Muto had to say after becoming Newcastle United's fifth signing of the summer.
Read more: https://t.co/ppiWnv1Bzd #NUFC pic.twitter.com/gRkF6Y1Nfp
— Newcastle United FC (@NUFC) August 2, 2018
語り手
「ニューカッスル・ユナイテッド ジャパン」
【拡散希望】
ファンミーティング開催!!!
日本のニューカッスルサポーター、集まれ!!!!#NUFC #ニューカッスル #toonarmy8月11日(土) 開幕戦vsスパーズ
都内で開催予定です。
詳細はこちらのリンクから↓https://t.co/fVfkSqJPJo pic.twitter.com/Gu8PtfifXI— ニューカッスル・ユナイテッド ジャパン (@nufcjapan) June 29, 2018
内藤秀明
<プロフィール>
1990年生まれ。大阪府出身。新卒でリクルートに入社。2年間勤務後に独立して「プレミアリーグパブ」代表に。
学生時代に1年イギリスに留学。コーチングライセンスを取得し、プレミアに強いサッカーライターとしての活動も開始。ほぼ毎シーズン渡英してプレミアを現地取材している
— 内藤秀明│プレミアリーグ専門ライター (@nikutohide) June 27, 2018
ニューカッスルの補強の実績
ニューカッスルについて詳しくうかがいたいのですが、
まず昨シーズンから振り返りたいです。
昇格して1年目の昨シーズンはあまりお金をかけた補強はできなかったと聞いていますが、それでも10位に入りました。
お金をかけなかった補強で成功したのでしょうか。
そうですね、大金を使う補強はありませんでした。
ただフランス人のフローラン・ルジューヌというセンターバックを獲得して、彼は大成功と言っていい補強です。
かなり器用ですよね。足元もうまいですし。
基本的には信頼感が非常に高い選手で、奪った後の展開力もあるのでいい選手ですよね。
というか、CBの相方もジャマール・ラッセルスもいいCBですよね。
大きなミスはなく、イングランド人にしては足元も上手いですし。
ラッセルズは安定してます。
2シーズン前のチャンピオンシップ(2部リーグ)の時は、ラッセルスとキリアン・クラークのCBコンビでした。
そして昨シーズンの頭には、ラッセルズがスタメンを外れてクラークとル新加入選手のルジューヌが組むのかなという見方が強かったです。
ただラッセルズは守りの集中力とキャプテンシーがこの1年間で、かなり伸びました。
CBにしては得点力もありますし、後半戦から完全にレギュラーになってましたね。
なるほど、ラッセルズは昨シーズン伸びた選手だったんですね!
そうなんです。
正直に言うと、2部時代のラッセルズは、プレミアに通用するレベルではなかったと思います。
ファンからもそこまでの信頼されてなかったように気がします。
それが、昨シーズンの前半戦でクラークよりもラッセルスの方だなとみんなに思わせるくらいのパフォーマンスでした。
まだ24歳ですし、注目株ですよね。
A代表にっていう声もありますし、クラブのレジェンドであるシアラーはずっと
「ラッセルスをイングランド代表に呼べよ」
と言ってます(笑)
フィル・ジョーンズよりも良いんじゃないかな?
と、正直思ってしまいます(笑)
昨シーズンのストライカーの補強は?
あとは補強していたのはストークからFWのホセルを500万ポンド(約7億円)で獲得しました。
でも、それくらいですね。
他はあまり補強はせず、夏はほぼ2部を優勝したメンバーでそのまま戦って、冬の移籍市場でアタッカーのケネディをチェルシーから昨シーズン末までのローンで、GKのマルティン・ドゥーブラフカを完全移籍で獲得しましたが、二人とも即フィットして大成功しました。ケネディも今夏にローン契約を延長しました。
ストライカーのライバルたち
そんな節約志向の強いニューカッスルですが、ストライカーは補強ポイントだったのでしょうか。
そうですね!
昨シーズン獲得したストライカーの新加入選手だったホセルはどうだったんでしょう?
昨シーズンの前半戦は多くの試合でホセルが1トップで出てたんですよ(編集部注:リーグ戦19試合出場、うち11試合は途中出場)。
でも、シュート精度がまだまだ低いですね。
枠にいかないことが多く、結局シーズンで4得点。
それにニューカッスルのサポーターがどういう選手を好むかと言ったら、やっぱり戦う選手なんですよね。
そこで十分だったかというと悩ましいところでもあります。
ニューカッスルはカウンターを重視するサッカーをしていますが、ボールを奪った後にスピードダウンしてしまう場面も散見されますし、ニューカッスルのサッカーにはまっているかというと微妙ですね。
あと、「戦う選手が好み」という意味では、ファイトする武藤は愛されそうですね。
確かにそうですね!
もう一人のストライカー、ドワイト・ゲイルはどうでしょう。
比較的、小柄(177cm)でスピード系の狡猾なストライカーという印象です。
おっしゃる通りです。スピードで抜け出すのが売りの選手ですね。
ただ、個人的には
「シュートに持ち込めただろ」っていう軽い接触でもファウルをもらいにいって、結局PKもらえない…
みたいなことが多くて、あんまり……。
まあ、スピード系の選手にありがちな癖ですよね。
はい……。
そういう背景もあってか、ゲイルは今放出路線で、ストークに行くという噂が出ていたり。
あと武藤を獲得したので、もう動かないかもしれませんが、ストライカーでいうと金銭+ゲイルでサロモン・ロンドンを獲得しにいくという話も出ています。
ロンドンか…。パワーもスピードもある重戦車のようなストライカーで、割と武藤に似ているタイプなので、獲得が決まればライバルになりそうですね……。
そうですね。ロンドンが来れば、武藤の出場機会は減るかもしれません。
ただ、ロンドンが来なければ、ホセルもいい選手なんですけどカウンター向きの選手かというと少し悩む。
ゲイルはスピードがありますけど空中戦なども含めてパワーは物足りない。
二人ともベニテス監督が施行するカウンター型のサッカーにおいて最適なストライカーとは言い難い。
もう一人のストライカー、ミトロビッチはフルハムへの移籍が決まった。
これらの状況を考えると、さらなる補強がない限りは、高さもパワーもスピードももまずまずの武藤は出場機会を得られそうですよね。
そうですね!
チームにフィットできる選手だと思います。
シェルビーとの連携が重要
トップ下に何でもできる器用なアジョセ・ペレスが入って武藤をサポーターしつつ、セントラルMFのジョンジョ・シェルビィが低い位置から裏に長いスルーパスを供給。武藤がスピードを生かして抜け出す。
みたいな絵図が簡単に想像できますね。
シェルビーとの連携は重要ですね。
彼はすごいロングフィードを通しますから。
今のチームは
「戦術=シェルヴィ」
なんじゃないかっていうくらいですよ。
あと、その横でモハメド・ディアメを使っていたら、これまではフィジカルタイプだった彼がちょっと良いパスを通すようになったんですよ。
前までは「バイタルは任せろ、それ以外は知らん」タイプだったんですけど(笑)
後半戦の最後の10試合くらいでディアメに展開力が備わり始めた。
その成長はすごい(笑)
余談ですけど、
シェルヴィと武藤は同じ1992年生まれなんですよね。
びっくりしました。
見えないですね(笑)
いずれにしても、シェルビーとの連携は重要です。
武藤なら多少ぶつけられながらもゴールに向かうゴリゴリさが、ゲイルよりはありますもんね。
結局のところ、シェルビーのような中盤の選手がいることを考えると、ニューカッスルが、ロンドンや武藤のようなパワーとスピードでゴリゴリと前に運べちゃう選手が欲しい理由がよくわかりました。
チームへの連携面でのフィットは問題ないのでしょうが、怖いのは怪我ですよね。
プレミアリーグならなおさらですよね。
ワントップ以外の可能性は
仮にロンドンが来た場合、武藤との2トップの可能性はあると思いますか?
なさそうですよね。
ですよね。チームの潤滑油として機能しているトップ下のペレスは外しにくい。
また、推進力のある左ウイングのケネディ、引いて展開したりカットインしてシュートに持ち込んだりもできるスコットランド代表の右ウイングのマット・リッチーのレフティコンビも絶対的存在ですもんね。
中盤の5枚はほぼ固定ですよね。
食い込むとしたら、まだわかりませんが、韓国代表の守備的MFの新加入選手キ・ソンヨンくらいでしょうか。
2列目の3人目はほぼ確実で、基本は[4-2-3-1]でしょうね。
そう考えると武藤はトップ下やウイングでの起用はほぼなさそうですね。
出られる枠はワントップだけですね。
そうですね……。
ウイングに関しても、左の控えにはガーナ代表クリスティアン・アツ という俊敏性の高いアタッカーがいて、
右にもジェイコブ・マーフィーという外に張りっぱなしの縦への推進力があるイングランド人ウイングがいます。
あとはアカデミー上がりの生え抜きのローランド・アーロンズもいますね。去年までローンで出されてはいましたが、この夏はトップに帯同してるんで残留の可能性もありそうです。
ウイングのこの豊富な陣容を見ると、やはり武藤が起用されるのは基本ワントップでしょう。
ベニテス監督やファンからすると武藤は好みの選手?
ちなみにアレクサンダル・ミトロビッチはワントップもできるいいストライカーでしたが、何故、フルハムへの放出が決まっちゃったんでしょうか。
すごくハードワークするタイプでファンからも愛されている選手だったんですけど、プレー以外のところに問題を抱えているというか。
肘打ちして退場とか、そういう不安定性を併せ持つ選手だったので、そこをベニテスは気に入らなかった印象です。
その点、武藤は優等生なので、安心ですね!
ですね!
守備も怠らないので、岡崎同様にファンの心もすぐ掴むでしょうね。
はい!
岡崎との違いでいうと、多分、純粋な空中戦は岡崎以上ですよね?
はい、そうですね。
でしたら、安心です。
右サイトのリッチーは中に絞る分、快速SBデアンドレ・イェドリンがガンガン上がってクロスを供給します。
なので、クロスに合わせられる選手だと助かりますね。
武藤は望まれた選手なのか?
ここまでの話を聞くと、起用ポジションは限られてますが、やっぱりチームの戦術にはまずフィットしそうですね。
そもそも去年はあまり投資できない状況でもラファ・ベニテス監督は結果を残した。そのためチームとしてもベニテス監督に契約を延長してほしいから、ある程度監督の言うことを聞く補強をするはず。
そう考えれば、武藤はベニテスの意に沿った補強である可能性が高いですもんね。
それもそうなのですが、一概にそうも言えない部分もあって……。
そこを話すとまた長くなるんですけど(笑)
そうなんですか?(笑)
はい……。
そもそも、ベニテス監督の契約はあと1年なんですよ。
彼には残る意思はあるんですけど、オーナーのマイク・アシュリーが補強に投資をしてくれないというところに不満を持っていて。
武藤の移籍金は950万ポンドと報じられていますが、これは昨今のプレミアの移籍金としてはそんな大きい額ではない。
もちろん金額で全てが決まるわけではないとわかってはいるものの、最近はプレミアのどのクラブも移籍金の最高額を更新している中で、うちのクラブだけが2005年のオーウェンの1700万ポンド(約30億円)で止まっているんですよ。
確かにビッグネームを獲得した記憶はないですね。
高い額で売ってはいるんですよ。
2014年にヨアン・キャバイエを2300万ポンド(約35億円)でパリサンジェルマンへ。
2016年にムサ・シソコを3000万ポンド(約45億円)トッテナムへ、売却しています。
なのに、ビッグネーム獲得はゼロ。
「そのお金はどこにいっちゃったの?」
と不満もたまります。
そのためラファ(ベニテスの愛称)も、
「この夏に記録更新くらいの補強をしないと契約延長しない」
「ストライカーを史上最高額で補強するぞ」
という姿勢も明確にしていたんですけど、結果的には武藤もそういう金額ではないです。
誤解して欲しくないのは、武藤が不満というわけではないんです。
すごくいい選手だと思いますし、来てくれて嬉しい。当然、活躍して欲しいし、してくれると思ってます。
ただ、ニューカッスルがこの冬から一番獲得したいと思っていたフェイエノールトのニコライ・ヨルゲンセンの予想移籍金の2000万ポンドや、同等以上の移籍金が発生しうるロンドンを獲得なかったところを見ると
「またクラブがお金を出し渋ったな」
という印象で、少し複雑な心境なんです。
この夏に獲得したのも、冬にローンで獲得していたドゥーブラフカを完全移籍させたのに使った300万ポンドと、
ケネディのローン延長、キ・ソンヨンのフリーでの獲得。
そしてスイス代表DFファビアン・シェアーも獲ったんですけど、5億円程度。
大金は使っていない。むしろ、武藤の移籍金が一番高いくらいです(笑)
当然、ベニテスもまだ契約を延長してくれていません。
ただ、オーナーのマイク・アシュリーも、ベニテスが続投にサインしなければこの夏はお金を使いませんという姿勢なんですよ。
そこでバチバチしているんですね……。
そうなんです。
アシュリーは「スポーツダイレクト」というスポーツショップを経営してるんですけど、とうとう先週頃からサポーターの中でそのショップでの不買運動が始まっていて。
ユニフォームも発売開始になるんですけど、スポーツダイレクトでは買わないようにしようみたいな流れになっています。
うわ……かき入れ時なのに……。
こんな背景もあって、武藤という選手自体は欲しいタイプの選手だったのですが、補強リストの一番上に載っている最優先の選手だったかと言われると微妙なところです。
なるほど……。
ちなみに、さきほども申し上げましたが、キ・ソンヨンという韓国人の選手もとった後に、日本人の武藤もとっているので、そういう側面もあるのかな?
なんてことも思っています。
なるほど。
二人とも純粋な戦力であることに間違いはありませんが、マーケット拡大を意識していることも間違いないでしょうね。
というか、もちろん第一優先ではなかったにせよ、そんな「ケチ」なオーナーが約10億円も支払ってくれたと思うとすごいですね。
すごく固い財布の紐を緩めたという意味では、
とても評価してくれているという側面もあるのかもしれませんね。
そういう見方もありますね!
武藤のチーム内での立ち位置がよくわかるインタビューになりました。
本当にありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました!
あれこれ言いましたが、武藤選手の活躍を心から願ってます!
(約6000文字)
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