【コラム】サッリ解任は秒読み?何故こうなった……

       
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プレミアパブ編集部

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マウリツィオ・サッリ、60歳、イタリア人。2018年夏にチェルシーの監督に就任するとリーグ戦では開幕5連勝に成功。

イタリア代表MFジョルジーニョを中心に据えたパスサッカーでプレミアリーグを席巻。

勢いそのままに、あわよくばタイトルレースに絡み続ける、少なくとも4位以上は固い…。秋ごろまではチェルシーファンのみならず、多くのプレミアリーグファンも、そう思っていた。

書き手

サッリの今

そんなイタリア人の名将を取り巻く環境は、今や楽観視できるものは何もない……と言えるほどに追い込まれている。

プレミアリーグにおける

「次の監督解任を争うレース」

通称「Sack Race(解任レース)」の一番人気は、各ブックメイカー、のきなみチェルシー指揮官の名前が名を連ねている。

そのオッズも「1.3倍」や「1.4倍」など。

現地の世論としては、「解任秒読み」まで来てしまったのだ。

序盤戦では勢いのあったチーム、監督が何故ここまで追い込まれてしまったのか。

早すぎた弱点の露呈

サッリにとっての不幸うちの一つは、チェルシー対策が想像以上に早く「発見」されてしまったことだろう。

それは皆さんご存知の通り、サッリボールの心臓「ジョルジーニョ」の徹底マークだ。

年内いっぱいくらいは新しい戦い方がもっていればもう少し違う結果になっていたのかもしれないが、10月にはマンチェスターユナイテッドが、11月にはエバートンが、徹底したゲームメイカー潰しでスタンフォードブリッジから勝ち点をもぎ取っていった。

疲労の蓄積

チェルシーは素晴らしいパスワークでゴールをもぎ取れることも多かったが、実は苦しい試合を、セットプレーや前線守備からのショートカウンターで勝ち切ることも多かった。

ただしセットプレーも徐々に読まれはじめ、年末に近づくにつれてチーム全体の疲労がたまり、前プレでボールを奪えない試合が増える。

同時に後ろからの飛び出しなども減っていくため、余計に、パスワークでも崩せない試合も増えっていった。

サッリの「スタメン固定制」も疲労の蓄積に拍車をかけた。

セリエAとプレミアリーグでは試合数が違うのだが、環境の違いを少し甘く見積もっていたのだろうか。

もともと内包していた守備の課題

結果、攻め切れない試合が増えてくると、浮かび上がってくるのが、後ろの不安定さだ。

もともとダビド・ルイスや、マルコス・アロンソは、90分間ノーミスを試合を終えることができるタイプではない。

比較的な簡単なクロス対応のミスなども多いのだが、それを覆い隠すほどの攻撃面の貢献度でカバーする。

得点がとれているうちは、彼らが一つ二つミスをしても痛手にはならないが、1-0のようなロースコアゲームでは彼らのちょっとしたミスが決勝点に繋がってしまったりするのだ。

ストライカーの得点不振

オリベイエ・ジルーの得点能力のなさは織り込み済み。彼は「得点以外のプレーを完璧に行う」ことでチームに貢献するタイプなので、予想外ではなかった。

ただしアルバロ・モラタの不調はチェルシーにとっては予想外であり痛手だった。

1年前の負傷以降、スピードを落としてしまったストライカーは、武器を失い、苦しんでいた。

最終的に解決策を見いだせないままチームを退団し、チェルシーはゴンサロ・イグアインを獲得することで、決定的な穴の補完した。今では解決した問題だが、年末年始ではストライカー不在がチームに悪影響をもたらしたことは間違いない。

勝てなくなるにつれ浮上する監督への不信感

プレミアリーグではペップ以前に関しては、細かくルールを設定してチームを統率するチームでの成功例はそう多くなかった。良くも悪くも、「個」のリーグであり「戦術」のリーグではなかったのだ。

そういう意味では、様々なルールを守ることをチームに要求していたサッリは、勝っているうちはチームコントロールができていたのかもしれないが、今ではセザル・アスピリクエタが頑張っているとはいえ、絶対的キャプテン不在の組織を、上手くコントロールできなくなっているのかもしれない。

サッリの「スタメン固定制」は組織としての健全性の悪化にも拍車をかけた。

オドイの移籍騒動は代理人が「暴れた」だけという話ではあるが、それでもそもそも出場機会がもう少しあれば、あんな騒動にはならなかったはず。

また今ではアザールとの折り合いが悪くなっていることを匂わす報道も増えている。

推測にしか過ぎないが、状況的には、モウリーニョ末期のような状態なのだろうか。

本来なら我慢すべきだった

と、ネガティブなことばかり書いたが、筆者はもともとは、サッリ解任派ではなかった。

もともとサッリボールの習得に時間がかかることはわかっており、

夏にある程度人員を整理し、今季作ったベースに新加入選手で幅をつけることで、来季の成功を期待していた。

現に、ペップ・グアルディオラ1年目と比べると、今季のサッリのほうが成績は良いのだ。

今年は「我慢の年」にするべきだった

衝撃のニュース

もしこの決定が動かしようのないものであるなら、サッリ解任は現実的な判断だろう。

もし新しい選手を獲得できないのであれば、若手育成ができないイタリア人監督にできることは少ない。

これまでのカウンター主体のサッカーから、ポゼッションベースのチームに大転換を図るチェルシーのプロジェクトはひとまずとん挫させるしかない。

後任には意外な名前が

現在の後任候補の一番手には、スティーブン・ホランドの名前が上がっている。

イングランドU21やチェルシーのリザーブでアシスタントコーチを務めた人間だが、トップリーグでの監督経験はなし。若手育成に定評はあるのかもしれないが、さすがに、実力が未知数過ぎる。

2番人気以降には、ジダンやゾラ、ランパードなどの名前も挙がっているが、現状、誰になるかは全くわからない。

まとめ

プレミアリーグの特異性と、サッリの頑固さが、チェルシーを不調に導いてしまったが、

1年目としては悪い結果ではないし、続投は大いに有りだった。

ただ状況が変わってしまった現状では、サッリ解任は避けられないだろう。

あとは良いタイミングで、良い後任監督あるいは暫定監督を就任させることを、一人のプレミアリーグファンとしては祈るばかりである。



【了】

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