18年間プレミアリーグを定点観測、誰よりも近い場所から試合を見届けるカメラマンの仕事とは

    チャンピオンズリーグ決勝を22年連続現地取材。

    2000年から18年間プレミアリーグを現地取材。

    日本で誰よりもプレミアリーグを現地で取材しているカメラマンがいる。

    はじめに

    山田一仁さんだ。

    イギリスに住み、プレミアリーグを長らく取材し続けている数少ない日本人だ。

    1957年1月1、岐阜生まれの61歳

    現在は岐阜にもお住まいがあり、イギリスとヨーロッパを往復する生活を送っている。

    プレミアリーグパブは、そんな大御所をお招きして、2018年3月1日にトークイベントを行った。

    会場でお話いただいた内容を今回記事にしている。

    (司会・内藤秀明、撮影・中村僚)

    テーマと自己紹介

    本日はよろしくお願いします。

    今回のテーマなんですけども、山田にカメラマンの仕事はどういうものなのか、プレミアリーグのカメラマンになるまでの経緯や、

    直近に取材したチャンピオンズリーグのチェルシー対バルセロナ(1-1)と、

    とヨーロッパリーグのアーセナル対エステルスンド(1-2)の試合をピッチ目線で見て、どういう選手が目立ったのかお話しして頂こうと思っています。

    あらためて山田さんと僕の自己紹介をさせて頂きます。山田さんはサッカーを中心に撮影をしているカメラマンで1957年生まれ、今年61歳の大ベテランです。

    90年からワールドカップを取材していて、96年から22シーズン連続でCL決勝を取材、EUROを6大会連続、2000年からプレミアリーグの撮影ライセンスを取得されていて、日本人だと山田さんだけですかね?

    後はサッカーダイジェストが持っていますが、個人では僕だけだね。

    とのことで、貴重なライセンスを持っていらっしゃるカメラマンさんです。

    僕の自己紹介をさせて頂きますと山田さんとは子供と親ぐらい年齢が離れているのですが(笑)、

    1990年生まれの大阪府出身。プレミアリーグ専門のサッカーライターをさせて頂いていて、2012年の5月からに1年間イギリス留学して、「ロンジャパ」というサッカーチームで山田さんと一緒にボールを蹴っていました。

    そこで仲良くさせて頂いてカメラマンのアシスタントをさせていただくなど、いろいろお世話になっている感じです。

    カメラマンの仕事について

    さて、ここからは山田さんにもどんどんお話していただこうと思います。カメラマンの仕事はどういう仕事なのか想像つかないところもあると思うので、基本的なところをまずご説明いただこうかなと。

    カメラマンと言ってもいろいろなジャンルがあって、僕はサッカーを専門としているカメラマンです。

    サッカーの場合は基本的に土日しか試合がないんだけど、日曜日だけでも年間50試合、土日続けて行けば100試合あるよね。

    チャンピオンズリーグのようなカップ戦も含めて水曜日、木曜日も行くと150試合ぐらい試合数があって、そのうちおおよそ年間100試合くらいはスタジアムに撮影に行ってます。

    サッカーのカメラマンの方がサッカーの撮影される際、どれくらいの時間について、試合前はどういう準備をしているのかでしょうか?

    かなり早めに到着しないとダメなんだよ。

    お客さんで行く時はキックオフに間に合えばいいんだよね。特にイングランドだと、選手がアップしている30分前のスタジアムは1割から2割しか入っていない。キックオフの5分ぐらい前に押し寄せてくる。

    スタジアムの座席では飲酒禁止なので、コンコース内や近くのパブでビールを飲んでいてキックオフの直前に座席につくのが彼らの普通。

    ただし僕らはだいたい2時間ぐらい前が目安で。遅くてもギリギリ1時間前には行って、カメラを出して不具合がないかを確認しつつ、自分の取りたいポジションを取りに行かなきゃいけない。

    プレミアの場合はスタジアムによって作りが全然違うから、カメラマンのスぺ―スが広いところと狭いところがある。

    あまり注目されていない試合だと、カメラマンも少ないのでたくさん撮影スペースはなんとかなるんだけど、人気の試合は全然スペースがない。

    だから早く行かないといけない。

    基本的に古いスタジアムの撮影スペースが狭いことが多いんだけど、マンチェスター・シティのエティハド・スタジアムは新しいのにスペースが全然なかったりする。

    基本的にはタッチラインでは撮影禁止で、ゴールラインのところもメインスタンドから見て左側にはスペースがあるものの、逆側はちょっと塹壕のように堀ってあるので難しい。

    なので試合前から、カメラマンは撮影ポジションを確保するという仕事がある。

    大体、2時間から1時間半前になると撮影ポジションのくじ引きをするから、万が一遅刻して1時間前に着いてもポジションがもうないんだよね。

    え、撮影ポジションってくじ引きなんですか?

    そこはくじ引きなんだよ(笑)。

    だから2時間前には行かないとポジションが取れないんだけど、車やバスで行くと渋滞に巻き込まれることがある。

    例えば、以前ユベントスに行った時、飛行機に荷物を預けたんだけど、一脚だけ出てこなかった。

    しょうがないからお店に買いに行ったらその時間だけ遅れてしまって、スタジアムは目の前に見えているんだけど、1時間ぐらい前になったら渋滞で全くバスが動かなくなって、結局キックオフギリギリに着いてしまった。

    そういうトラブル海外多いですよね……。

    試合が始まってからは、どういうお仕事の流れなんでしょうか。

    試合中は集中して撮影されるのだと思うのですが、どのタイミングで写真などを出版社などにお送りしているんですか。

    昔と今とで全然違うから、昔話もすると、

    フィルム時代は、スタジアムには現像する部屋があってその場で現像していたんですよ。暗室の中に現像する人がいてドライヤーでばーっと乾かしてスキャンするとか。

    今はデジタルになっているからそんなことはもうないけどね。

    あとは国別でも文化が若干違っていて、プレミアリーグは少し特別。

    イギリスは新聞などが歴史的にヨーロッパの中で1番早くできたからなのか、サッカーの母国だからなのか、メディアの人が写真をすぐ送らなければいけないことリーグ運営側も理解を示してくれているんだよ。

    なのでカメラマン+写真を送るためのアシスタントを1人スタジアムに入れていいことになっている。

    その場合は撮っている人の横にアシスタントを座らせて

    「何コマ目の写真を送ってくれ」

    とか言いながら撮影する。

    ハーフタイムとか試合が終わってからでもいい日もあるけど、日本の新聞に送る場合は急ぐことも多い。

    例えば15時キックオフの試合は、夏時間だと8時間も時差があるので日本時間だと23時。日本の新聞は24時が締め切りだったりするから、試合が終わらなくても前半の分だけ送ったりすることもある。

    香川真司がマンチェスター・ユナイテッドにいた時は、

    「活躍しなくてもいいからボールを触ったシーンにだけ送って欲しい」

    なんて言われたりもしていたから、とりあえず香川の写真だけ撮って早めに送ることも多かったね。

    ちなみに写真と原稿では、原稿のほうが締め切りは遅いみたいで、

    香川が得点して原稿ではゴールシーンに触れられているのに、写真は別の場面なのはそういう事情。

    今は機材も進歩していて、撮った瞬間にパソコンにすぐ送れる。

    写真を撮った瞬間インターネット経由でスタジアム内の部屋にいるアシスタントに送っている通信社もあって、そのアシスタントが紙面に使える写真だけピックアップして送る作業をしている。

    ※通信社…道機関や民間企業の需要にこたえてニュースの収集、配信を行う企業のこと。日本でいうと、地方の新聞社は地元に記者が集中するので、地元以外のニュースなどは通信社から購入して紙面を構成している。

    他にも今のデジタルカメラにはマイクが付いているものもあって、例えば「ウィリアンの先制ゴール」なんて写真にキャプション(写真の説明)をつけることができる。なので、アシスタントが生で見てなくても写真を選べるようになっていて便利だよね。

    写真の世界は、どんどんスピード競争になっているので、世界的な通信社は速さ勝負。写真の良さも重要だけど速さも本当に重要。

    速いほうが勝ちみたいなところがある。

    新聞、雑誌などカメラマンにとっての「お客さん」には締め切りがあるので、やっぱり速くしないとダメなんだよね。

    フィルムとデジタルの違いについて

    ちなみに1試合で大体どれぐらいの写真を撮るものなんですか?

    フィルム時代と今とで全然違ってきそうですが。

    フイルムは撮った分だけ現像しなければいけないのと、枚数制限があった。

    若い人はフィルムの事をわからないかもしれないけど、フイルムは最大36コマしか撮れない。

    36コマとったらフィルムを変えないといけないので、

    例えとして正しいかわからないけど、ガンマンとかがわかりやすいかな。彼らが6発しか入らない回転式の銃で4発目を打ち終わって、敵が3人いたらアウトじゃない。

    ガンマンとカメラマンは似ていて、自分が今何回シャッターを押してるのか数えて

    (これ以上使ってしまうとアウトだな)

    とか考えながら撮っていた。

    大体1試合、36枚撮りフィルムで10本ぐらいが平均かな。

    ボールは保持しているけどお互いにチャンスがない、ただボールが回っているだけという試合は10本より少くなる。

    でもどちらにもピンチとチャンスがあって見所の多い試合、実際に点が入らなくても、シュートをギリギリでファインセーブするシーンなどが多い試合だと、20本ぐらいになることもあったね。

    フイルム時代は10本だと360枚、20本でも720枚ぐらい。

    デジタルになってからは少なくても500枚はとるかな。

    デジタルはコンパクトフラッシュ(フラッシュメモリ型メモリーカード)とかSDカードだから1回買ってしまえば、その後お金はかからない。フィルムの時は大体1本を1000円くらいで買って、1本現像するとまた1000円ぐらいかかる。

    使えば使うほどどんどんお金がかかったが、正直つらかったな(笑)。

    今はカメラ自体は高くなったけれど、フィルムを消費するところでお金がかからなくなったから有難いね。

    撮り方も人によって変わるんですか?

    変わるよ!

    バラバラと映写機というかビデオのようにシャッターを押したまま連写する人もいる。

    僕はあんまりバラバラ撮らなくて、連写することはあまりないかな。

    (…続く)

    続きを読みたい方へ

    残り1万5000文字以上あるインタビュー全文は、

    ・プレミアリーグのカメラマンになるまでのキャリアとは?なんであの有名企業を辞めて独立を?

    ・約20年イギリスを拠点に取材しているカメラマンの目線で素晴らしいスタジアムとは?

    ・日本人と欧州トップレベルの差はフィジカルだけではなく…?

    ・実は、プレミアリーグのあのクラブが…地元メディアを優遇するんです…?

    ・ピッチ目線で、カメラのレンズのズーム越しで観察して初めて見えてくる

    アーセナルやチェルシーの選手の特徴とは?

    「ムヒタリアンのルックアップの癖とは?」

    「アスピリクエタがメッシを止められた理由とは?」

    などなど、興味深いテーマ盛りだくさんです。

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