プレミアパブ編集部
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先日、「あなたがアーセナルサポーターになるべき3つの理由」という記事をうっかり最後まで読んでしまった。
読み終えてもアーセナルのファンにならなかった私は、
この記事に対抗して「あなたがチェルシーサポーターになるべき3つの理由」という記事をすぐに書かないといけないと思った。
しかし3つも理由が思いつかなかったので、
仕方なく「あなたがチェルシーのサポーターにならないほうがいい理由」を考えてみると、
どんどん自虐ネタがあふれ出てきたので、なんとか苦労して10個の理由にしぼった。
上質のパスサッカー、スペクタクルなサッカー哲学などに心躍らせている熱心なサッカーファンの方々が、
以下につづく理由を読んで我が身の幸運をあらためて確かめることができれば幸いである。
(1)クラブの名前を人に伝えるときに、いつも微妙な思いをする
趣味として「サッカー観戦」を挙げると「どこのチームを応援しているんですか?」と尋ねられて「チェルシー」と答えると、
たいていの日本人にとってその名はまずもって「株式会社明治のキャンデー」の名称として受け止められる。
実際、クラブの位置するロンドンのチェルシー地区の名前をこのキャンデーの商品名として採用したわけで、
明治の公式サイトをみると「愛らしい」「女性的」「甘い感じ」「しゃれた感じ」という消費者テストの結果を受けてこの名前に決まったそうである。
したがって我々がサポートするサッカークラブは、日本人的にはなんだかアメをなめまくったかのような甘ったるい響きを想起させるのであり、
「アーセナル」とか「なんとかユナイテッド」とか、
そういう勇ましい響きとは無縁なところから説明をスタートさせないといけないのである
(「そう、アメじゃなくて・・・あ、アメのほうのチェルシーもおいしいですよね、ええ」)。
(2)チーム創設のきっかけが、あまりカッコよくない
そもそもチェルシーFCは、すぐ近くにある別のクラブ、フルアムFCのために新しいスタジアムを建設したのに、
話がこじれて「やっぱりそのスタジアムは要りません」となったことで、
新たにサッカークラブを作ったことから始まったのである。
つまりチェルシーFCは「仕方なく」作られたサッカークラブなのであり、最初に誰かの高貴な野心とか夢とかそういうものから芽生えたわけでもない、
なんとも言えないビミョーな経緯から歴史が始まっていったのである。
「八つ当たり的に、仕方なく始まったサッカークラブ」が、
どういうわけか現在はイングランドのトップリーグや欧州チャンピオンズリーグで闘っているという自覚をチェルシーのサポーターは忘れてはいけないはずなのだが、たぶん多くの人は忘れたがっている。
(3)絶対的なライバル関係のあるクラブがない
上記の理由からすれば、ご近所のフルアムFCとは因縁浅からぬ関係として、
強烈なライバル意識が芽生えていてもおかしくはなかったはずである。
しかしどういうわけか今日に至るまでそういう関係性を築くことには失敗しており、むしろ「兄弟」みたいな感覚すらある。
まして近年のフルアムにおいては、前オーナーの趣味でスタジアムにマイケル・ジャクソンの像が建立されるなど、対抗意識というよりも困惑を覚えたり心配をしてしまうような気分になっているチェルシーファンも多いはずだ。
なのでアーセナルとトッテナムのように、激しい敵意をむき出しにした緊張感あふれるダービーマッチとは無縁であることがチェルシーのつまらない部分である。
そのくせ、イングランド国内はもちろん世界中のクラブ(そして審判も)からは総じて嫌われており、
そういう意味では毎試合ムダにピリピリとした緊張感がただよっていると言えなくもない。
(4)若手育成のヘタさっぷりに耐えなければいけない
充実した育成環境を誇り、世界でも屈指の優秀なユースチームを抱えているチェルシーFCは、
トップチームで活躍できる有能なタレントを次々と輩出している・・・ただしここでいう「トップチーム」はチェルシー以外のクラブにおいて、である。
また、近年でも資金力に物を言わせ世界中に張り巡らしたスカウティング網からニューヒーロー候補と目される若手選手の獲得に次々と成功してきたが、
選手個人が成功するのは青いユニフォームを脱いだ後からになる。今シーズンも他チームでエース級の働きをみせているケヴィン・デ・ブライネ、モハメド・サラー、ロメル・ルカクなど、
かつてはチェルシーの一員でいたことをサポーターはときおり思いだしては、やりきれない気持ちを抱えながら「踏み台」のような気分で生きていかざるを得ないのである。
(5)高額な移籍金を投じて外から獲ってくる大物選手が、絶不調になりやすいチーム環境であることに耐えなければいけない
「フェルナンド・トーレス」。
(6)昭和のマンガのような名前のオーナーに振り回されることを覚悟しないといけない
突如現れてチェルシーのオーナーになった「ロシアの石油王、アブラモビッチ氏」は日本人にとって「昭和のマンガかっ!?」とツッコミをいれたくなる存在であった。
そんな衝撃の第一印象から、もうかれこれ15年ちかくになるわけだが、
ロシア・マネー投入により“チェルスキー”と呼ばれ「金満チーム」と揶揄されつつも、最高レベルの才能を集め(そしてまた投げ売り)、
50年ぶりのリーグ優勝やチャンピオンリーグ初制覇を果たしたことは、なんだかんだ揺るぎない不朽の功績となった。ただし一方でよくわからない人事騒動が勃発したりするわけで、
どんな有能な監督がチェルシーを率いても、ちょっとしたタイミングで突然解任されることに慣れないといけない。
そうしてチームの方向性や戦術はコロコロ変わり、去年まで主力だった選手が突然ベンチ要因になったり放出リストに載ったりすることをいつも覚悟しなければいけない。
このあたりのスリリングさは今後も続いてくだろうし、ある日突然、アブラモビッチがチームから手を引いて大混乱に陥って、崖から一気に転がり落ちていく危険性もあるわけで、
そういう日がくることを・・・実は心のどこかで「怖いものみたさ」で期待してしまう自分もいたりする。
「夢の劇場」だとか「美しく勝利せよ!」だとか「クラブ以上の存在」みたいな理念だとか「君は独りで歩くことはない」みたいなポエムを語りたがる人は決してチェルシーを応援してはいけない。
しょせんこの世は結局、昭和のマンガみたいなもので、お日様は西から昇り、青い夕陽となってロンドンの街を染めていくのだ、それでいいのだ。よくないか。
(7)公式グッズのデザインがダサいことに耐えないといけない
あくまで私の持論だが、サッカークラブが世界中にファンを増やすべくグローバルなブランド展開を推進させようとすると、
クラブの公式グッズのデザインは、多様な国や世代に受け入れられやすいものになっていくため、どんどん平均的で無難なものに落ち着いていき、その結果すべてがダサい方向性になっていく。そしてチェルシーに関してはTシャツのデザインにそれが顕著であり、
手に取りたくなるようなクールさとは無縁である。
この日本語「チェルシー」シャツは、あまりに酷いがゆえにジワジワくるので、今回あらためて見るとだんだん欲しくなってきた。そういう作戦か?
(8)ホームの試合開始直前に流れるパンクな曲が、よく聴くと景気悪い
ホームスタジアムのスタンフォード・ブリッジに近いキングス・ロードの通りはロンドン・パンク発祥の地であり、
偉大なパンクバンド「ザ・クラッシュ」のフロントマン、故ジョー・ストラマーはチェルシーのファンでもあった。いつもホームゲームの試合開始直前には、
ここぞというタイミングで、ザ・クラッシュの代表曲『ロンドン・コーリング』が一曲まるまるスタジアム内に大音量で流れるのが恒例となっており、
それはチェルシーFCの数少ない美点のひとつだと個人的に思っている(しかし実はほかのロンドンのチームでも流れているらしいのだが、それはさておき)。
このクラブにとっていわば「裏のテーマソング」とも言えるこの『ロンドン・コーリング』だが、しかし曲の歌詞をよーくみてみると「ロンドンは水没する!
といったような不穏な内容で、おおよそ試合前の選手たちやサポーターを鼓舞するようなテイストではない。みんなを鬱屈した気分にさせてどうするんだ。
(9)ボハルデという選手のことで一生ネタにされ続けることに耐えないといけない
ついにこの話をしないといけないのか・・・
ウィンストン・ボハルデ(Winston Bogarde)という名前はチェルシーを応援しようとする者にとっては避けて通れない存在である。メディアの企画で「サッカー選手の移籍をめぐる世紀の失敗例」みたいな記事がたまにあるが、
ボハルデこそはそうしたランキングで常に優勝争いを繰り広げることになる「チェルシーFCの正真正銘の黒歴史」であるからだ。
オランダ代表歴のある当時30歳のボハルデは2000年にチェルシーと4年契約を結ぶ。そして2004年までの4年間、
リーグ戦先発はわずか2試合、通算でたった12試合の出場にとどまり、年俸は約4億円。
早々に戦力構想外になりクラブもあの手この手で彼を放出したがったが、
ボハルデは不屈の精神力でチェルシーに留まり続けて見事に4年契約を全うし、通算で約16億円のサラリーを得てサッカー界から引退した。
たしかに監督交代のタイミングのアヤが問題の原因だと言われたり、
当時のチェルシーが他のクラブに先駆けて多国籍軍化していった背景もあって、
外国人選手のマネージメントにおいてはもはや「多様性! 何でもアリ!」な雰囲気があったのかもしれない。
それにしてもボハルデに支払った給料、出場した1試合あたりで換算すると1億2千万円超・・・ボハルデがすごいのか、チェルシーのフロント陣がおめでたい連中なのか。
おそらく今後もボハルデの名前はチェルシーサポーターをからかうにはひたすら金字塔的ネタでありつづける。
ちなみに近年よく知られているように、チェルシーでは30歳を超えた選手への複数年契約の更新は、
たとえレジェンド級の選手であっても認められないという方針がある。このクラブの冷酷非情な実態を世間にさらしてしまっているのだが、
この方針の影にはボハルデの事例があったからだろうと容易に想像される。
スーパー・ボハルデ、彼こそはある意味でチェルシーの歴史を変えたレジェンドともいえる。
「ボハルディズム」という言葉すら生み出したくなるし、
チェルシーサポーターとして生きる“負け犬”社会人のひとりとしては、どこかで「ボハルディズム」に共鳴したくなる気分がないといえばウソになる。
(10)自虐的で卑屈なサポーターとならざるを得なくなる
チームの愛称は「Blues」だが、
「ブルー=憂鬱」と捉えると、言い得て妙である。
「でも今は強豪チームで、立派じゃないですか」と言われようと、
そういう立場に不慣れなこともあり「たまたま今はお金があるだけ」とすぐに言い返したくなる。
先述の通り、いついかなるタイミングで一気に没落するか分からない、
その恐怖感と隣り合わせである不安定さのなかにおいて、かろうじて「応援する理由」を見出しているのがチェルシーサポーターであり、要するに面倒くさい人々である。
しかし規模にかかわらず、イングランド国内にある数え切れないほどのサッカークラブのうち、
95%ぐらいのクラブはこれと似たような、やっかいで面倒くさい事情を山のように抱えているとも言えるのではないか。
つまりそうした境遇のイングランド国内の大小クラブの、たまたま頂点ぐらいに位置しているのがチェルシーFCなのだと思う。ジャイアント・キリングで格下にぶっ倒され、
一気に下位ディビジョンの底なし沼に沈みゆく可能性に満ちていることはイングランドのあらゆるレベルで常に起こっていることで(特にFAカップという大会は、その過酷な現実を忘れさせないようにする啓発イベントの一環ではないかとすら思える)、
チェルシーFCのサポーターとして味わえるもの、それはフットボール・クラブを応援することにまつわる哀れで報われない、
先の見えない日々の終わりなき苦悩であり、輝かしい王冠が一瞬のうちに、
指をすりぬけて地上にしたたる泥水のなかに落ちてゆくような幻想にとりつかれて生きていくことだ。ロンドン・コーリング!
さて、ここまで我慢強く読んでくれるような人がいるとすれば、その人は哀れなチェルシーのサポーターか、
好奇心旺盛なヒネくれたサッカーファンのどちらかであろう。ぜひ「チェルシーサポーターになるべき理由」を3つ挙げられるかどうか、
悪夢の続きみたいな話をいつか語りあおう・・・。
※本記事は、FOOTBALL ACTIVISTの記事を転載しています。
書き手
タテイシナオフミ
ブログ更新:あなたがチェルシーのサポーターにならないほうがいい10の理由 https://t.co/nk0Eh0rnnL#CFCJapan #チェルシー #CFC
— タテイシナオフミ(こんな人たち) (@NaofumiTateishi) 2018年2月7日
【プロフィール】
「サッカーを生活に、生活をサッカー的に」というコンセプトのブログ「FOOTBALL ACTIVIST」をたまに更新。
近年は「マラソン大会の沿道でサッカーユニフォーム姿のランナーさんを見つけては勝手にサッカーっぽく応援する」という自主企画を主に関西圏で実施して
「サッカーのない現場でJリーグのサポーターをサポートする」という実験的な遊び方を探求。
Jリーグ全体を応援したいので特定クラブのサポーターではないが、陰ながら海外ではチェルシーFC、
女子サッカーでは藤田のぞみ選手に特別な気合いを込めて声援を送り続ける。