プレミアパブ編集部
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2018年1月6日、FAカップ3回戦で4部コベントリー・シティに敗れた3時間後、
ストークはマーク・ヒューズを解任した。
就任期間は4年半、日数にして1682日と、苛烈な競争にある昨今のプレミアにおいては長期政権の部類に入る時間を過ごしたが、それだけに、様々な出来事もあった。
今回は、彼がストークに残した功績と罪過を合わせて5つ振り返っていこうと思う。
マーク・ヒューズ政権下におけるストークのリーグ成績
2013/14シーズン:13勝11分14敗 50pts 45得点/52失点
2014/15シーズン:15勝9分14敗 54pts 48得点/45失点
2015/16シーズン:14勝9分15敗 51pts 42得点/55失点
2016/17シーズン(22節まで):5勝5分12敗 20pts 23得点/47失点
1.クラブ初のトップハーフ進出と、それに伴うクラブバリューの向上
トニー・ピューリスからチームを受け継いだ時、ストークは残留すること自体そう難くないが、
上位進出を目指せるほどでないポジションが定位置であった。
その現状をフロントは良しとせず、更なる向上を目論んでヒューズに指揮を託し、ヒューズは見事それに応えることとなる。
ロングボール主体のフットボールから、バルセロナのエッセンスを加えたポゼッション志向へのシフトは、多くのサポーターからの支持を得た。
本人たちがいない今なおスタジアムで鳴り響くボージャンやムニエッサのチャントが、その志向性に対するサポーターの答えと言っていい。
3年連続でクラブを9位に導いたその手腕は間違いなく評価されるもので、ストークのブランド的価値を高める一因となった。この点はヒューズの功績と評されて然るべきだろう。
2.アカデミーの価値向上
近年のストークの育成組織と言えば、
最も出場機会が多かった選手でもライアン・ショットンが43試合出場したのみに留まるなど、
とにかく育てることには定評のない組織だった。
それが近年では右SBのトム・エドワーズを筆頭に、若手の有望株を少しずつ輩出してみせている。
ヒューズ1人の手柄ではないのだが、トップチームの指揮官に若手を起用する腹積もりがなければ、
どれほど優秀な育成機関を保有していても意味がない。
その点、アカデミーの選手がトップチームに抜擢されることすら稀だった頃からは確実な前進を見せている。
3.固定観念に囚われない大胆な起用法
スウォンジーやリヴァプールではボランチとしての起用が主だったジョー・アレンの得点能力を見出だし、
トップ下で運用することでその能力を最大限引き出すことに成功した。
この抜擢がなければストークは2016/17シーズン終了時点でプレミアリーグから姿を消していたかもしれないという点において、
ヒューズの手腕は見事であったと言えよう。
ただし、ヒューズ独特の感性からくる大胆な抜擢は罪過ももたらした。
キャリアを通じてCFか攻撃的なサイドのポジションでしか起用されたことがなかったマメ・ディウフを右サイドの守備的ポジションで起用する運びとなり、
選手個人レベルではまずまず成功を掴んだ。
が、この起用を過信しすぎたあまりに右SBの補強を怠り、結果として自身の解任に繋がる守備崩壊を巻き起こした。
固定観念に囚われることなく、選手を客観的に評価できることを証明したが、
自身の眼力までは客観視できなかったのかもしれない。
今現在、ディウフはランバートに「キミはストライカーなんだ」という言葉を受けて本職のストライカーへ復帰している。
右SB経験が無駄か有用かはわからないが、今のところは遠回りだった、としか形容できないところだろう。
4.目利きの下手さ、積み上がる不良債権
マルコ・アルナウトヴィッチやエリック・ピーテルス、ジェルダン・シャキリなど活躍した選手も勿論いる。
だが、彼の在任期間中は、どちらかと言えば失敗と形容されるような取引の方が多かった。
特にストライカーはオデムウィンギー、ホセル、ボニー、ベラヒーノとほとんどが失敗に終わっており、
最終的にクラウチにどうにかしてもらう以外に有効な選択肢は持てないままだった。
翻ってみれば、実より名を取った補強の数々により、ネームバリュー的には強いが、いざ試合となれば「名前の割には…」というチームが出来上がっていた。
CL優勝経験者を5人揃えておきながら降格圏を漂うクラブという惨状がそれを物語っている。
今なおクラブに残る、起用法に苦慮する選手たちの存在は、後任のランバートにとって大きすぎる宿題として積み上がったままだ。
5.崩壊した要塞、食い尽くされたリソース
ピューリスの下では堅守を誇ったストークが、ヒューズの下では年々悪化の一途を辿っていた。
今シーズンに至っては解任される21節までに47失点を計上。これは欧州5大リーグで最悪の数字であり、
かつヒューズが率いた中で最も成績の良かった14/15シーズンの年間失点数すら上回る。
今のストークを見て「守備のいいチーム」と形容するような識者は存在しないと言っていいし、
かつてはスタジアムを含め要塞とあだ名された堅守は過去の話で、吹けば飛ぶような守備陣はクラブに暗い影をさす存在となっている。
攻撃面においては既存のメソッドから脱却し、新たなチームを作り上げる能力を証明したヒューズであるが、
同時に、主に守備面における既存のリソースを食い尽くしてしまう欠点も露呈して見せた。
短期的にはリソースの消耗を上回るモノを持ち込めるのだが、そこからの発展がなかなか見込めず、
その間もリソースの消耗は止められない。結果として、長期政権を託すには不向きな指揮官としての評価を確立しつつある。
書き手
プロフィール
慢性的な腰痛と先天的に脆弱な呼吸器を引っ提げて生き、
トニー・ピューリス退任後からストーク・シティFCを愛するようになった変わり者。
普段はストークに関する翻訳や総括、悪態をTwitterで展開中。
なんというか、今のストークは面白いというよりは愉快だな。
— 広澤利規 (@toshikihirosawa) 2018年2月3日