【ポジション別で詳しく解説】ハキム・ツィエクはチェルシーにどうハマる?

       
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プレミアパブ編集部

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7月1日、モロッコ代表アタッカー、ハキム・ツィエクが正式にチェルシーの選手となった。

そして11日には早速チェルシーで初練習。

クラブ公式Twitterによりその楽しげな様子が伝えられた。

書き手

メディア部・チェルシーRYOTA

チェルシーに人生をかける大学生。きっかけは2007年の現地観戦、アンドリー・シェフチェンコのユニフォームを購入。今では半年に1回のペースでイギリスに渡りコブハムやアウェーの地にも足を運ぶ。ランパードとランニングをしたのは二度とない体験であった。

 

はじめに

爽やかな笑顔が似合うこのアタッカーは、来季からのチェルシーに何をもたらしてくれるのだろうか。今回はポジションごとにその可能性を探ってみる。

プレースタイル・スタッツ

※データはすべて『transfermarkt』を参考

まず彼のプレーを簡潔に説明すると、左利きのテクニシャンで、ドリブル、パス、シュートが高いレベルにあり、おまけにセットプレーも蹴ることができる、まさに“ハイブリッド型”の選手である。それはエールディビジでの数シーズン分のスタッツを見ても一目瞭然だ。

2014-15:33試合13ゴール15アシスト

2015-16:33試合17ゴール12アシスト

2016-17:32試合9ゴール13アシスト

2017-18:34試合9ゴール17アシスト

2018-19:29試合16ゴール17アシスト

2019-20:21試合6ゴール13アシスト

※スタッツはリーグ戦のみにかぎる

※なお、2019-20シーズンのエールディビジは9試合を残して打ち切りとなっている(本来は全日程消化して34試合)

2016-17シーズンから2018-19シーズンにかけて3シーズン連続でアシスト王に輝いていることからわかるように、パス能力が際立っているが、それとともにコンスタントに得点も決めている。その活躍が認められ、今シーズンも含めて3年連続でアヤックスでクラブ年間最優秀選手にも選ばれており、かなり期待が膨らむ。

ちなみに、過去3シーズン分(17-18~19-20)のリーグ戦の各スタッツに焦点を当て、プレミアの有力選手と比べてみると…

【アシスト数】

ツィエク:47(84試合出場)

ケヴィン・デ・ブライネ:36(89試合出場)※今季のデータは7月18日時点

【ゴール数】

ツィエク:31(84試合出場)

ソン・フンミン:35(96試合出場)※今季のデータは7月18日時点

エールディビジは今季第25節で終了しているというハンデがありながら、このスタッツだ。イングランドとオランダというリーグの違いはあれど、かなり楽しみな数字である。

ただやはり、プレミアリーグとエールディビジでは、文化、プレー強度、スピード、求められるサッカーなど多くのことが違っている点には注意しなければいけない。

オランダ産のアタッカーがプレミアリーグに適応できない例は数多くあり、単純にスタッツだけ見て判断するのは危険だ。

その中で早くチームにフィットするには、フランク・ランパード監督の起用法がカギになってくるはずだ。そこで、ここからは、ツィエクがチェルシーでどのポジションで使われ、どのように活躍することが見込まれるのかを具体的に紐解いていく。

 

ポジション別でみるチェルシーでの起用法

●ファーサイドへのインスイング・キックが活きる右WG

アヤックスでは主に右WGで起用されており、チェルシーでもある程度自由な役割を与えられ、プレーメイカーとして慣れ親しんだ定位置に収まるのが最有力と考えられる。

ドリブルからのカットインを得意とするツィエクは、相手DFを1人外しての、ファーサイドへのインスイングのシュートでゴールを決める形が十八番だ。また、斜めのランニングでスペースに走るFWへのラストパスも非常に得意である。

そしてツィエク最大の武器が、キック精度を活かしたファーサイドへのゴールに向かっていくクロスで、相手の右SBとGKの間の絶妙なスペースに落とすことができる。

今シーズン、スタンフォード・ブリッジで行われたCLグループステージ・アヤックス戦で、ツィエクのクロスからクインシー・プロメスが頭で合わせたゴールはチェルシーファンなら覚えているだろう。あれはまさにツィエクの視野の広さとキック精度が凝縮されたプレーであった。

このプレーをチェルシーで再現するには、ツィエクが顔を上げた瞬間の、逆サイドの選手の動き出しが重要になってくる。チェルシーで左WGで起用されることが多いクリスチャン・プリシッチ、カラム・ハドソン=オドイは、ランパード監督が就任してからオフ・ザ・ボールの動きを向上させている傾向がみられるので、ツィエクのクロスから得点を量産するところをぜひ見てみたい。

●テクニックが活きるトップ下

足元の技術が高く、アイデアが豊富なツィエクは、ストライカーのすぐ後ろ、つまり“ナンバー10”のポジションもこなす。

今シーズンはメイソン・マウントが起用されることが多いが、使われて活きる彼に比べて、ツィエクは周りを使うこともできる。イマジネーションがあり、相手のDFラインと中盤ラインの間で受けるのが上手いため、サイドを駆け上がる両翼やストライカーへのスルーパスにも期待が持てる。

また、ドリブルで相手を抜くこともでき、ロングシュートも得意としているので自らゴールを量産することも可能である。

●オプションの一つ、左WG

アヤックスのエリック・テン・ハーグ監督は、ツィエクをほとんどの試合で4-2-1-3の右WGで起用していたものの、彼の標榜するサッカーでは、前線の4枚は流動的にポジションを入れ替えるため、ツィエクが左に回ることも多々あった。

クロスのバリエーションの多さを考えれば、左サイドからチャンスを数多く創出することは可能であるが、チェルシーの左WGにはプリシッチやハドソン=オドイががいて、さらにマウントが使われることもあり、手薄なポジションではないため、わざわざランパード監督がこの位置で起用するとは考えにくい。ただし、オプションの1つとなり得る可能性はあるだろう。

●パスセンスを活かしたインサイドハーフ

アヤックスでは中盤まで下りてきてビルドアップにも参加しており、そこからの大きなサイドチェンジや裏へのロングパスも多々見受けられた。また、ツィエクを1列後ろに下げることで、右のペナルティーエリアの角から鋭いクロスやミドルシュートを打つことにも期待できる。

創造力の高さとパスセンスを考慮すると充分に可能ではあるが、このポジションにはマテオ・コバチッチ、ロス・バークリーなどの実力者が数多くおり、左WGと同じように激戦区となっているため現実的ではなさそうだ。

●一番ハマる?右シャドー

次に、3-4-2-1の右シャドーで使うパターンについて考えてみたい。

まず、左WBを主戦場とするマルコス・アロンソの得点能力は無視できない。彼はディフェンスが本職でありながらも数多くの得点を叩き出しており、それは右サイドで作った起点から生まれたものがほとんどである。

たしかにハドオン=オドイやプリシッチもオフ・ザ・ボールの動きを身につけつつあり、得点力は決して低くはないが、何よりアロンソには2人にはない高身長とシュートの上手さがある。

ツィエクが蹴った右ペナルティーエリア角からのクロスに対し、スピードのあるプリシッチがオトリとなってスペースを生み、そのスペースに走りこんだアロンソがゴールを決める光景が目に浮かぶ。

また、攻撃のスキルが多彩なツィエクをサイドにずっと張らせておくのは非常にもったいない

システムを3バックにしてシャドーに置くことで、サイドにもゴール前にも関与することができ、ツィエクの才能をより発揮させることができるのではないだろうか。

加えて、3バックにすることで、守備職人のセサル・アスピリクエタを右CBに置くことができ、WBと一緒に右サイドの守備面のサポートをすることも可能である。さらに、このシステムだと、中で受けたツィエクの外をWBが走るプレーも想像できる。

攻撃的なアロンソとのバランスを考慮しても、チェルシーが3バックにするメリットはある。その3バックシステムをより引き立てるのがツィエクのシャドー起用というわけだ。

以上のことから個人的にはツィエクの1番ハマるポゾションは”3-4-2-1の右シャドー”であると思っている。理論的には噛み合っている気がするが、いかがだろうか。

 

おわりに

ここまで述べた通り、ツィエクの加入はチェルシーに多大な利益をもたらすことが期待できる。ファイナルサードでの仕事に長けており、ゴールやアシストを量産している。

また、チェルシー待望の左利きアタッカーであることに加え、セットプレーのキッカーも任せられる。チェルシーの最近のセットプレーの期待値はお世辞にも高いとは言えない。そこにキック精度の高いツィエクが加入するわけである。

壮絶な打ち合いとなったCL・アヤックス戦では豪快な直接FKも決めたが、ぜひとも今度はチェルシーで決めてもらいたい。

こんな逸材が4500万ユーロ(約54億円)というバーゲンプライスで、同タイプの左利きアタッカーであるアーセナルのニコラ・ぺぺの半額であるから驚きだ。

さらに、彼のインタビューを聞く限り、英語での受け答えも問題なさそうだ。15日に行われたノリッジ戦の後には、プリシッチと楽しそうに話している写真が、そして、コブハムでの練習の様子からは、リース・ジェームズと肩を組んでいるシーンが見られた。うまくチームメイトと打ち解けた笑顔のツィエクを早く見たいものだ。

 

 

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